163キロ右腕を生で見たい!

この週末、参院選不在者投票も済ませ、大船渡(岩手)の佐々木朗希投手(3年)の試合(4回戦、対盛岡四、岩手県営野球場で21日午後0時30分開始予定)を観戦予定のファンもいるかもしれない。例えば、東京から朝一番で向かって間に合うのだろうか。シミュレーションしてみた。

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東京駅発午前6時32分の東北新幹線(始発)に乗ると、盛岡駅に同8時45分に到着する。車内でひと眠りするにはちょうどいい時間だ。盛岡駅では北海道へ向かう車両と、秋田へ向かう車両が切り離される。なかなかレアなシーンにも立ち会える。

盛岡駅東口にはタクシーが約30台待機。岩手県営野球場までは5キロ弱。「10分から15分くらいで、1800円くらいかな」(運転手)とのこと。バスも20~30分に1本ある。ただし、想定外の混雑ぶりもありえるのが今回。タクシーにもバスにも乗らず、あえて歩いてみる。気温24度。暑い。

盛岡駅から北東方面へ。北上川にかかる旭橋を渡る。空気が澄んでいれば、岩手山の勇壮な姿を見ることができる。午前9時4分、道すがらにある「福田パン」に到着。コッペパンに、約60種といわれる具材から好きなものを選んで挟むことができる盛岡のソウルフードだ。私は夏らしく「夏みかん&マンゴーとヨーグルト」にした。もう1つ「とんかつ」を買っても合計200円台。ボリュームもあるコッペパンでかなりお買い得だ。パン自体もかなり美味。

福田パンを後にし、JR宮古線の踏切を渡ると、盛岡一高の近くに出る。7月7日、大船渡・佐々木が練習試合で20奪三振の快投を演じた舞台だ。先日18日の一戸戦でも13奪三振だった佐々木だが、投球内容としてはストライク先行だった盛岡一戦の方が断然に良かった。あの投球をいつ出すのか、楽しみである。

そこからは球場まで一直線。国道4号を横切る。東京・日本橋から539キロ地点。新幹線なら2時間強、自転車ならおそらく3日。歩いたら何日かかるのだろう。900メートルの北山トンネルを歩きながら、妄想に浸る。汗ばんだ体にトンネルの涼が心地よい。

トンネルを抜けると、岩手県営野球場までは約700メートル。三塁側スタンドの様子も肉眼で見える。焦る気持ちを抑えながら、球場までにコンビニエンスストアがあと2店。水分とタオルと日刊スポーツをしっかり買い、球場へ向かう。

16年の岩手国体では球場駐車場入口からこの北山トンネル出口まで大渋滞が起きてしまったという。駐車場入口手前には交差点もあり、1度渋滞が起きてしまうと交通混乱に至りかねない。高野連関係者は「明日は状況を見ながら(駐車場の)開門を早めることになるかもしれません」と話す。20日は午前6時に駐車場を開け、同8時過ぎには満車になったという。

球場への坂道を上りきると、サイレンが鳴った。午前10時ちょうど。盛岡駅から約5キロを、のんびり歩いて1時間15分。第1試合の第1球に何とか間に合った。ネット裏にもまだそこそこ空席があるし、第2試合へ気分を高められる。日曜日と佐々木朗希登板が重なる21日はどうだろうか。

誰しもが良い席で観戦したいし、タクシーが順調に流れている限り、盛岡駅から徒歩で訪れる人はほとんどいないだろう。問題は帰路。タクシーもおそらく簡単には呼べず、徒歩を強いられる人も多くなるはずだ。160キロ(?)の余韻に浸りながら、約1万歩をこなすのも悪くない。東京への最終の新幹線は、午後8時50分に盛岡を出発する。【金子真仁】