日本文理が“王座”を奪還した。東京学館新潟を12-3で破り、2年ぶり10度目の優勝を決めた。

先発の南隼人投手(3年)が6回を1安打無失点、7奪三振の快投。エースが作った流れに乗って、打線は16安打の猛攻を見せた。昨秋の新チーム結成から秋、春、夏と3季連続県大会優勝。県内公式戦無敗の18連勝の勢いを持続して、夏の甲子園(8月6日開幕)に乗り込む。

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全力疾走した。南は右翼からマウンドに向かい、猛ダッシュした。「遠かった。でも、うれしかった」。たどりつくと4番手で登板した長谷川優也三塁手(2年)を中心にした輪に笑顔で加わった。優勝、甲子園-。そんな言葉が自然と頭に浮かんだ。

「正直、最後はマウンドにいたかったです」と照れ笑い。7回裏から右翼の守備に回った。それまでは隙のない投球だった。1回裏に東京学館新潟の1番其池勇哉遊撃手(3年)に初球を左前に運ばれた。だが安打はこの1本のみ。その後は6回裏1死から四球を出すまで1人の走者も許さない。この日最速142キロの速球と、スライダー、カットボールのコンビネーションで7奪三振。ほぼ完璧な内容の69球でチームを勝利の流れに乗せた。

前日23日は準決勝の新潟戦後、学校に戻り佐藤輝星捕手(3年)とミーティング。「無駄な四球を出さないように」と課題をチェック。それを決勝の舞台で実行した。「南は良すぎた」。鈴木崇監督(38)は最大級のほめ言葉を贈った。同時に「ケガ明けでもある。甲子園を見据えて、今まで通りに継投した」。

南は昨年10月14日の秋季北信越大会準々決勝、東海大諏訪(長野)戦で先発。2回を投げたところで右ひじ靱帯(じんたい)を損傷し降板した。今春県大会は登板がなく、この夏の2回戦・新発田中央戦(11日)が270日ぶりの公式戦登板だった。

今大会は3回戦を除く5試合すべて先発で計30回を投げ失点2の34奪三振。「夏にかけてきた」と言う。鈴木監督は「回復というレベルではない」と完全復活を越えて一段アップしたことを認めた。戦列を離れる中、体幹のトレーニングと走り込みで体力アップ。ひじが下がり気味だったフォームを修正。直球の最速は143キロに伸びた。南は「投げられない期間をプラスにできた」と振り返る。

エースの好投に乗り、打線も爆発。3人で終わったのは3回表と7回表だけ。12得点で残塁は6。ロスのない攻撃でスコアボードに得点を刻み続けた。投打がかみあいつかんだ10度目の夏甲子園。一昨年、1年生だった南はスタンドで応援していた。「あの景色の中で全国制覇を目指す」。自信に満ちた絶対エースを軸に日本文理が頂点に挑む。【斎藤慎一郎】

◆日本文理 1984年(昭59)創立の私立校。生徒数は891人(女子325人)。野球部も同年に創部。現在は部員104人、マネジャー5人。甲子園出場は夏9回、春5回。09年夏に準優勝、14年夏はベスト4。主なOBはDeNA飯塚悟史、ヤクルト鈴木裕太ら。所在地は新潟県新潟市西区新通1072。上野順治校長。