大船渡が、35年ぶりの甲子園へあと1勝に迫った。

完勝した準決勝のヒーローの1人は及川恵介捕手(3年)。リードがさえ、盗塁も3度阻止。連戦となる25日の決勝に向けて球数を減らしたい佐々木朗希投手(3年)を頼れる女房役が支えた。スタンドからの、ある大きな声が活躍を呼んだ。菊池雄星、大谷翔平というメジャーリーガーを生んだ強豪・花巻東を打ち破り「オール大船渡」で夢をつかむ。

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ナ~イスキャッチャーーーーーーーーーーー!

打者を追い込むたびに、三振をとるたびに、ショートバウンドの投球を止めるたびに、岩手県営野球場に大声が響いた。「普通はナイスピッチャー! なのに。勇気をもらえます」と乗せられた及川恵も本当にうれしそうだ。

声の正体も知っている。「あれは大洋の父ちゃんです」。木下大洋外野手(3年)の父・清吾さん(52)だ。大船渡の84年春夏連続甲子園出場時に1番三塁を任された元気印が、後輩たちの夢を後押しする。

「今日の恵介はすごかった。全部止めるし、アウトにするし。朗希にはナイスピッチャーって言わなくてもすごいから」。準々決勝では活躍した選手の父から「チューしたい!」の声が出たが、清吾さんは及川恵を「だっこしたい!」と絶賛。息子・大洋のことは「心の中で褒めてますよ」と付け加えた。

及川恵の動きはキレていた。低い二塁送球は3度ともストライク。佐々木は「向こうが勝手に走ってきて、恵介が勝手に刺してくれた」と独特の言い回しで相棒を褒めた。150キロ捕球からの送球、を反復練習した成果が出た。

佐々木の直球がすごすぎて、何度もミットのひもが切れる。縫い方も覚え、手を痛めた分だけ上手になった。いよいよ夢まであと1つ。相手は「カットがうまい。しっかり対策して、必ず勝ちたい」と警戒する強敵の花巻東。ベンチ、スタンド一体で、大船渡の全てをぶつける。【金子真仁】