13年連続16度目出場の聖光学院(福島)が、2年連続で悔しい1点差負けを喫した。先発したエース須藤翔投手(3年)が持ち前の打たせてとる粘投を見せたが、4回2死から連打で先制されると、6回にはソロ本塁打で追加点を許した。7回に荒牧樹内野手(3年)の本塁打で1点差に詰め寄るも、9回に失策も絡み失点。その裏、荒牧の2打席連続弾が飛び出したが、あと1歩及ばなかった。

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最後の最後まで食い下がったが、流れを引き戻すことはできなかった。9回裏2死一塁、代打西牧航内野手(3年)が二ゴロに倒れると、聖光学院の夏が終わった。

1つの判定が明暗を分けた。先発の須藤が、テンポよく打たせてとる真骨頂の投球で0に抑えて迎えた3回裏の攻撃だった。先頭の清水正義主将(3年)が流した打球は、三塁手の頭上を越え左翼線に落ちた。誰もが二塁打と思ったその時、ボールが一塁に送られると、アウトの判定。まさかの一塁踏み忘れだった。「絶対に二塁を狙えると思った。自分は踏んだというより触れたと思った。戻ってもしょうがないと思った」と清水。無死二塁のチャンスが一転、1死走者なしとなった。

「流れ」とはこういうものなのかもしれない。直後の4回表に先制されると、6回には本塁打で追加点を許した。打線もつながらない。それでも7回裏に荒牧の公式戦初本塁打で反撃。しかし1点差で迎えた9回表には、今度は荒牧の失策をきっかけに痛い追加点を許した。「自分のミスから失点したので、このまま終わるわけにはいかなかった」。荒牧は9回裏、2打席連続本塁打を放ったが、笑顔はなかった。

それでも春のどん底からチームが立ち直ったのは事実。5月の春季県北支部決勝で福島商に敗れ、県内公式戦の連勝が49で止まった。県大会でも敗れ、チームのムードは最悪になった。レギュラーと控え選手の間に不協和音が生じたことで2週間、練習を全く行わず1対1で本音をぶつけあい結束を図った。「甲子園に出ることすら奇跡のようなチーム」(清水)、「甲子園から呼ばれることはないチーム」(赤津翔平マネジャー)から生まれ変わり、13連覇を達成した。

斎藤智也監督(56)は「歴代の聖光でも下の下だったが、甲子園に来ても恥ずかしくないチームに成長した。野球の神様に見放されそうになったところからよく立ち直った」とたたえた。3年生たちの生き様は後輩たちも受け継がれる。唯一の2年生、箱山直暖投手は「来年、甲子園に戻ってきて、弟のようにかわいがってくれた3年生の分まで頑張りたい。日本一のピッチャーになりたい」と雪辱を誓った。【野上伸悟】