頂点が見えた。星稜(石川)が24年ぶり2度目の決勝進出を決めた。3日前に延長14回完投の熱投をしていたエース奥川恭伸投手(3年)が志願の先発で7回無失点。今大会自責0を継続して中京学院大中京(岐阜)を退けた。あす22日の決勝の相手は春のセンバツで3安打完封した履正社(大阪)。

投手の投げすぎに対してかまびすしい時勢で、星稜・林和成監督は18歳の奥川を信じた。165球の熱投から中2日。常に「ベストのコンディションで投げさせたい」と気を使う林監督も迷っていた。だが、最後は本人の意思を尊重する形で、先発を決断した。

「3年間一緒に過ごしてきた。彼は何でも正直に言う子」。林監督は奥川の入学以来、誰よりも真剣に観察し、言葉に耳を傾け、守ってきた。1年夏の関東遠征で奥川が頭部死球を当てた時のこと。幸い無事だったが打者はしばらく動けず、救急車が呼ばれた。

相手の保護者からは厳しい言葉が飛び、球場が重い雰囲気になった。ここで林監督は謝罪しながら、毅然(きぜん)と「グラウンド内でのことですので」というニュアンスで、相手側の興奮を鎮めた。

奥川はまだ1年生。メンタル的に尾を引くかもしれない局面。監督はただ謝るだけでなく、未来の大エースの心に深い傷を残したくない一心だった。

「真摯(しんし)に野球に取り組んでいる。野球小僧という言葉は彼のためにある」。決勝も奥川は投げたがっている。林監督は状態を自らの目で把握した上で、慎重に決勝のマウンドに上げる決断をするつもりだ。【柏原誠】