第92回センバツ高校野球(3月19日開幕、甲子園)に21世紀枠で出場する磐城(福島)が、地元小学生からうれしい激励を受けた。

昨年4月から1、2週間に1度のペースで地域貢献の一環として、同校に近い平一小の敷地内にある「あげつち学童保育クラブ」と「あげつちの丘学童保育クラブ」の71人の児童を対象に、野球指導を中心に交流を行ってきた。センバツ前最後の訪問となった26日は、雨の影響で校庭が使えず活動は限られたが、児童から手作りの寄せ書きフラッグを受け取り、選手たちは甲子園への決意を新たにした。

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「僕らのヒーロー」を待ちわびるかのように、学童保育クラブの前に、子どもたちが飛びだしてきた。磐城・岩間涼星主将(3年)が、「みんなと一緒に遊ぶことでたくさん元気をもらい、それを野球につなげて頑張ることができた。甲子園でも、みんなからもらった元気を力に変えて頑張るから、テレビで見て応援してくれたらうれしいです」とあいさつすると、直後にサプライズが待っていた。子どもたちから「甲子園出場おめでとうございます。優勝目指して頑張ってください」と、寄せ書き入り激励フラッグが贈られた。

交流のきっかけは、夏の甲子園100回大会を機に18年に発表された「日本高野連200年構想」に基づく。木村保監督(49)は「野球の普及と、地域貢献が2本柱。そして個人的には、選手には将来リーダーシップをとれる人材になってほしいので、子どもたちに教えることの難しさ、喜びを学んでほしいと思った」と打ち明ける。

小学校低学年で東日本大震災を経験し、一時は野球もままならなかった選手たちにとっても、野球離れは決して人ごとではなかった。放課後の約1時間、まずはTボール、キャッチボールといった基本を楽しく教えることから始まった。当初は三塁に走りだす子もいたが、今では試合ができるまでになった。野球だけではなく、縄跳び、鬼ごっこ、鉄棒など、選手たちで考えた「飽きさせないメニュー」でもてなした。負傷中の選手は、進学校らしく得意の勉強も教えた。あげつち学童保育クラブの加藤江里子支援員は「いろいろな活動をしてくれるのでありがたいです。サッカーをやっている子が多かったけど、野球も面白いという子が増えた。女の子も頑張っている」と感謝する。岩間主将は「野球に興味を持ってほしいと始めたのに、自分たちも初心に戻れて、野球の楽しさを再確認できた」と活動の意義を実感した。

平日の練習は約2時間半と限られる中、貴重な1時間に全力を尽くした。子どもへの指導は、選手主導で練習メニューを作成するチームにとってもプラスに働いた。木村監督は「相手をどれだけ思って話せるか。練習中に選手同士で話す言葉のレベルも上がってきた」と成長を認める。そして「将来この中から1人でも野球をやりたい子が増えてくれれば」と願った。岩間主将は「甲子園では子どもたちに、少しでも力を与えるようなプレーをしたい」と夢舞台での躍動こそが最大の地域貢献と信じ、前に進む。【野上伸悟】