春夏通算15度の甲子園出場を誇る盛岡大付(岩手)に、東北初の日本一に挑む新拠点が誕生した。

選手寮の「清瞬館(せいしゅんかん)」が4月1日に本格稼働する。家族のようなコミュニケーションを図れる場にするため、全員が一堂に会する食堂は掘りごたつ式。大浴場では裸の付き合い。食事も関口清治監督(42)と松崎克哉部長(33)の両夫人が“おふくろの味”を毎日提供する。2季連続で逃した全国舞台は「モリフファミリー」でつかみ取る。

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盛岡大付が固い団結力を野球につなげる。関口監督は「選手同士がもっとコミュニケーションを積極的にとれる場所が欲しかった。強くなるには先輩後輩の上下関係だけでなく、兄弟のような関係も必要かなと。みんなが力を合わせられる家族になりたい」。野球に専念する環境はもちろんだが、親元離れた球児が一般生徒と同じ感覚を持てる環境も整った。

現在の寮は2人部屋だが、6人部屋となった。風呂が各部屋についていたため、夜は閉じこもってしまう選手もいただけに、10人前後が一緒に入れる大浴場も導入。携帯電話は禁止だが、そのぶん各部屋にテレビを設置。昨秋は「4番捕手」を務めた塚本悠樹捕手(2年)は「テレビがユーチューブにつながっているので、みんなで楽しめたり、野球の映像も見られるのはすごい」。食堂はミーティングルームも兼ねているが、時にはスクリーンでの映画鑑賞やカラオケなどの娯楽室に早変わりすることも可能だ。月に1度、誕生日会も予定している。

遠く離れた母を感じることも重視する。手料理を振る舞ってくれるのは監督、部長夫人。塚本も「タンドリーチキン、豚丼。フルーチェも最高」。手作りデザートも満喫する。選手の実母らが寮に集って食事担当を務める「お母さんの日」も月に1度設ける。「野球が出来るのは親御さんのおかげですから」(同監督)と母への手紙も推奨する予定だ。

同校は新型コロナウイルス感染拡大の影響で今月1日から活動を自粛。選手全員が親元に帰った。選手らは現地で自主練習のみだったが、23日から約3週間ぶりに再始動。グラウンド整備から開始し、小林武都主将(2年)は「練習試合など楽しみたかった3月。悔しい思いもあるが、夏の甲子園に出場するためには焦らずにやることも大事。バラバラな気持ちは今日から1つになった」。昨夏は県3回戦敗退。同秋は県制覇も東北大会4強で今春センバツは補欠校止まり。塚本も「監督さんにも親にも感謝。恩返しは甲子園に行くこと」と決意を新たに再出発した。【鎌田直秀】