東北の高校野球界は、夏に向けて少しずつ再発進している。秋田県北東部鹿角市の山間部で活動する十和田も、休校措置が解除された11日に練習を再開。19年1月から「Team TOWADA」と銘打ち、ツイッターなどのSNSを活用した地域密着で町おこしの役割も担ってきた。

新型コロナウイルス感染拡大も、培ってきた発信力を生かし「Home TOWADA」と題した新たな取り組みも導入。オンラインミーティングでは特別ゲストなども迎えて心技体ともにプラスに転じさせた。

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球音が戻ってきた。先月21日から20日間の部活動停止が明け、球児の笑顔もグラウンドに帰ってきた。休校中は「Home TOWADA」と名付け、ビデオ会議アプリを使用したミーティングを連日繰り返して、新たな収穫も多く得た。

食事や睡眠方法、技術向上理論を学ぶだけでなく、神居恵悟監督(25)の横浜国大野球部時代の知人などを講師に招いた。昨夏の甲子園に初出場した飯山(長野)神林部長と服部主将、社会人の三菱日立パワーシステムズ佐々木玄外野手、ポーランド代表監督を務める渡辺龍馬氏、米独立リーグなどでプレー経験を持つ井神力氏など国内外からの講義も新鮮だった。

チーム最小150センチの黒沢李亜内野手(2年)は、休校中の成長が著しかった1人だ。海外で挑戦する2人から「英語を覚えるために知らない人にまで声をかけたりする姿勢はすごいと思えた。野球がうまくなりたいなら自分が足りない部分をしっかり把握して、貪欲に多くの意見を聞いていきたい」。自己分析能力を飛躍的に伸ばし、下半身主導の打撃フォーム習得に第1歩を記した。

豊田駿平主将(3年)は目標設定の重要さを痛感した。今までは「ホームランを打ちたい」と目標設定し、通算4発を達成してきたが「夏の最後の大会でホームランを打って勝利につなげる」と設定をより具体化。佐々木選手や飯山球児から高い夢の設定が現実を引き寄せることを聞き「コロナとかを言い訳にしてはいけないし、目標達成には何が必要かを自分で考えれば、いま何をするべきかのモチベーションが生まれる」と改心出来た。卒業後は自衛隊を目指し、人助けをする人生目標も追加した。

18年秋には部員4人だったが、今春には1年生14人(うちマネジャー3人)が入部し、計28人(同7人)まで増えた。地域の八百屋、花屋、ガソリンスタンドなど数多くの地元住民も出演してキャッチボールでつなぐ野球部PRや、毛馬内盆踊り参加などで地域交流。部員が作成した新入生勧誘や通常練習の動画などの効果もあり、同校野球部への入部希望者や応援熱も高まってきた。

神居監督も「この休校期間中に、より具体的に自己分析出来る選手が増えてきた」と進化を実感。「最終的には『オレ、十和田高校出身なんだ』と言えるようになってくれたらうれしい」と期待する。発信力から発想力を身に付けた成果を披露する夏を待つ。【鎌田直秀】