新型コロナウイルスの影響により全国高校野球選手権(夏の甲子園)と地方大会が中止になったことを受け、県高野連は新潟県独自の大会開催に向けて準備を進めている。UX新潟テレビ21で夏の県大会の実況を務める岡拓哉アナウンサー(28)は長岡高で野球部に所属していた。取材を通じて感じた、甲子園という目標を失った球児の心境、自らの高校野球への思いを語った。

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岡アナは昨年まで3年連続で夏の高校野球新潟大会決勝の実況を担当してきた。自身は高校時代、長岡のエースで4番。高校野球への思い入れは人一倍ある。

「自分は甲子園がすべてでした。球児の気持ちを察すると夏の甲子園が中止になった時は言葉がありませんでした。ただ、報道の立場にいる人間としては、(新型コロナウイルスで)亡くなった方もいる状況でリスクを最大限排除するのは必要。その間で消化不良なところはありますね」

中止決定後、新潟明訓の高橋陽斗主将(3年)、中越の広瀬航大主将(同)ら県内球児の姿を自ら取材。自身がキャスターを務める夕方の情報番組「スーパーJ にいがた」などで放送した。

「この3年間はなんだったのだろう、という気持ちを吐き出させてあげたかったです。僕らの勝手かもしれないですけど。『俺たちはこう思っているんだ』ということを世間に伝えるのも役目なのかなと」

取材を断られる覚悟もあったが、一様に協力してくれた。各校の監督が球児に寄り添っていたことを感じた。そして球児の気丈な振る舞いと、その奥にある本音が印象に残った。

「高橋君も広瀬君も、次のステージを見据えていました。1、2年生のために自分たちはありたい、とも話してくれました。でも、涙を流している3年生も少なくない。彼らも悔しさを押し殺して話してくれているんだなと思うと切なかったです。前を向いています、というコメントを聞いて『みんな前向きなんだ』と単純に思ってほしくはないです。陰には違う気持ちがある。彼らの表情やしぐさで、視聴者の皆さんに受け止めていただきたいと感じました」

実況担当として意識しているのは選手個々の背景をちりばめること。試合を1つの物語として提供することを重視してきた。

「これからも甲子園は甲子園としてあり続けるでしょう。その中で今年の3年生の姿はこれからも残り続けると思います。1、2年生は3年生の思いを絶対に胸にしなければならないし、野球に携わっている側も伝え続けなくてはならないです」

高校時代を振り返り、高校野球の中に自分が存在していたことが、その後の糧になったという。「費やした時間が、その後の夢や目標につながります。今の悔しさを乗り越えたら、3年生はより強い世代になるでしょう」。県高野連は独自大会の概要を6月中にまとめる予定。本来の形ではない中で最後の夏を迎える3年生にメッセージを送った。【斎藤慎一郎】

◆岡拓哉(おか・たくや)1991年(平3)9月11日生まれ、小千谷市出身。東小千谷小3年から野球を始め、東小千谷中では野球部に所属。長岡高では3年夏の県大会で3回戦に進出。法大スポーツ健康学部スポーツ健康学科に進み、14年にUX新潟テレビ21に入社。夕方の情報番組「スーパーJ にいがた」のキャスター。趣味はゴルフ。