<高校野球岩手大会:花巻東16-0盛岡北>◇18日◇3回戦◇八幡平市総合運動公園野球場

試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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花巻東(岩手)の安ケ平(やすがひら)琉希内野手(3年)が、公式戦初打点で8強入りに貢献した。

昨夏は「応援リーダー」としてスタンドから2年連続の甲子園を導いた。敗退時、ともに戦った応援団や吹奏楽部の仲間に「来年はみんなの大きな声援を力に、オレが打って甲子園に行く」と約束。「8番三塁」で先発した2回1死一、二塁から中前適時打を放った。

コロナ禍により、スタンドからの大歓声はなし。「本当は応援してくれる人、支えてくれた人に見て欲しかった。正直、自分にとっては最後の試合、打席だと思って立った。仲間に感謝したいし、恩返しになったと思う」。静寂の中、一塁上で少しだけ右手を上げた。本来はスタンドで喜んでくれるはずだった大応援団に向かって。

中学時代は岩手県優勝を総なめにした好投手だった。1年秋の東北大会で安打を放つほどの期待も受けたが、今夏はベンチ入り20人の当落線上。花巻地区予選を含む3試合で、3年生38人中、主力投手2人を除く全員が出場し、3戦連続無失点での5回コールド勝ち。「3年生全員の力で“夏3連覇”したい」。21日の準々決勝からは全学年含めた厳選20人がベンチ入り。普段は試合出場に恵まれなかった3年生が活躍した。【鎌田直秀】