元オリックスの土井健大監督(31)率いる東大阪大柏原が夏の初戦を突破した。大商大堺との強豪私学対決で、2年生右腕松本心が公式戦初完封を飾った。

土井監督の声が弾む。「先発は正直すごく迷ったんですが…」。本来ならエース近藤一輝(3年)。この日も4球団のスカウトが訪れたプロ注目の右腕だ。しかし、コロナ自粛期間の取り組み方、練習試合の結果などを踏まえて、背番号11の松本を抜てき。すると直球、変化球を織り交ぜ、4安打、98球の完封劇を見せた。指揮官は「9回投げたことない子やのに。継投のつもりやったのに」とうれしい誤算を喜んだ。

高校時代は履正社で通算43発を放ち“ミニラ土井”と呼ばれた。06年ドラフト5位でオリックスに入団。しかし、1軍出場がないまま、巨人に移籍し、プロを引退。社会人の硬式、軟式を経て、18年10月から高校野球の監督になった。

昨夏は3回戦敗退。同年暮れには部員の部内暴力が起こり、3カ月の対外試合禁止。そしてコロナ自粛と考えることが多い時間を過ごした。

「全員を1つにとらえた指導をしない」。野球は全体の決まり事で統率されがちだが、選手個々との会話、指導を増やした。また自粛を言い訳にする部員がいたことで「もっと苦しんでいる人がいるのに、自分たちが野球ができるように尽力してくださった。そこに感謝ができないなら、もうユニホームを脱ぐか?」と訴え、意識向上を促した。

土井監督は「この1勝はすごく大きい。100点です」と言う。今夏の、そして同校野球部の大目標は「打倒、履正社&大阪桐蔭」だ。「もちろん目の前の試合を1つずつなんですが、この2強とやるまではね」。昨夏は3回戦で姿を消した。今夏のお楽しみはこれからだ。【加藤裕一】