大やけどを克服した京都共栄学園・三木慶太投手(3年)が最後を締め、初戦突破に貢献した。公式戦初登板。5回に4点を追加した後、春日丘(大阪)を82年夏の甲子園に導いた経歴を持つ神前俊彦監督(64)から「最後、2アウトから行くで」と告げられた。

7回2死一塁で登板。いきなり四球を与え、緊張が解けない三木のもとに伝令がやってきた。「キープ セイム(いつもと同じように)」。聞き慣れた言葉に、顔がほころんだ。さらに四球と暴投で2死満塁のピンチを招いたが、最後は変化球で左飛。「やってやろうという気持ちだったんですけど、緊張してしまいました」と笑みがこぼれた。

苦難を乗り越えてたどり着いたマウンドだった。小学5年生の13年、家族と行った京都・福知山市の花火大会で爆発事故に巻き込まれた。大やけどを負い、入院生活は半年にも及んだ。やけどの傷痕はまだ残っている。高校では野球も勉強もしたいと進学したが、入部は最後まで迷った。「花火大会でやけどをしています。入部しても大丈夫ですか」。神前監督にたずねるとすぐに背中を押された。「ぜひやってほしい。大けがをして乗り越えた姿が、勇気を与えると思うよ」。

一昨年、三木についての記事を読み、心を動かされた阪神メッセンジャー(当時)からサイン入りユニホームと自著が送られた。10月上旬には、お礼に甲子園を訪れて対面。約1時間、いろいろな話を聞いた。「キープ セイム」はその時に教わったもの。右腕が大事にしていた言葉は、グラウンドの監督室の入り口にも書かれている。チーム全体に浸透している合言葉だ。

試合前日、地元紙のネット記事に寄せられたたくさんの応援コメントを神前監督から渡された。「最後まで精いっぱい頑張って、見てもらった人に勇気を与えたい」。感謝を胸に最後の夏を戦い抜く。【磯綾乃】

◆三木慶太(みき・けいた)2002年(平14)10月31日生まれ、京都・福知山市出身。下六人部(しもむとべ)小1年の時に下六レッズで野球を始め、六人部中では軟式野球部に所属。京都共栄学園では1年秋に初めてベンチ入り。165センチ、60キロ、左投げ左打ち。

◆福知山花火大会の露店爆発事故 13年8月15日午後7時半頃、京都・福知山市の由良川河川敷で、花火大会の直前に露店で爆発が発生。死者3人、重軽傷者55人を出した。