2020年甲子園高校野球交流試合が開幕し、開幕カードに登場したプロ注目の最速148キロ右腕、大分商・川瀬堅斗主将(3年)は8回8安打3失点で花咲徳栄(埼玉)に敗れた。この日は最速143キロ、7与四死球と本調子ではなかった。だが九州豪雨被災地へ勇気を届ける思いや、甲子園でプレーできる感謝の気持ちを選手宣誓にも投球にも盛り込み、全力を尽くした。

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エースは気迫で、8回149球を投げきった。

1-3の6回無死二塁。「点を取られると流れが良くないので、ゼロで抑えるよう投げた」と花咲徳栄打線に立ち向かった。三振、中飛に打ち取り、相手1番を「一番いいボールだった」という142キロ外角直球で見逃し三振に仕留めた。

自己ベスト更新の150キロを甲子園で出すのが目標だった。「出せるものをしっかり出そうと思った」とマウンドに上がった。だが「緊張はなかったが、興奮していた。甲子園の雰囲気に負けてしまい、思うようにストレートが入らなかった」。1回1死満塁の押し出し死球で先制点を献上。さらに2点を失った。

2回以降「流れを作ろうと出せるものを出した」と多彩な変化球も駆使し、踏ん張った。高校通算50本塁打でプロ注目の相手4番・井上朋也内野手(3年)に対し「厳しいとこで押して打ち取れた」と2打数無安打に抑えた。ただ、7四死球と制球に苦しんだ。

7月4日の練習試合中、左太ももの肉離れを起こした。「(影響は)ないです」とケガのせいにはしなかったが、制球難がきっかけで初回に失った3失点が重くのしかかった。

ブラスバンドの演奏もアルプスの大声援もなかった甲子園の夏。それでも「どこの球場より甲子園はすごい所と実感した」。進路については「監督と相談して考えます」と語るにとどめたが「甲子園はこれからの人生につながる。悔しい経験を次のステージで生かしたい」と前を向いた。

選手宣誓では「九州豪雨災害が身近にあり、勇気を与える言葉をかけられたらと思った」と明かした。被災地に勇気を届ける思いも力に、高校生活の集大成を見せた。【菊川光一】