第93回選抜高校野球大会(21年3月19日開幕、甲子園)の21世紀枠候補9校が11日、日本高野連から発表され、北海道地区は今秋の全道大会で16年ぶり4強入りした知内が候補校となった。今冬は「甲子園に招かれるには」と題し、約3時間のミーティングを4回、計12時間実施。大人気漫画「鬼滅の刃」の映像なども活用し心の強さ磨き、前回出場の93年以来28年ぶりの吉報を待つ。21世紀枠3校は、一般選考と同じ1月29日の選考委員会で決定する。

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知内が再び聖地を踏むチャンスを得た。この日午後3時過ぎ、21世紀枠候補選出の校内放送が流れ、横断幕も掲げられた。主将の川村亮太右翼手(2年)は「甲子園はあこがれの場所だが、大事なのは出られたかどうかではなく、そこを目指すに当たって何を学べたか。どんな状況でも自分たちがやることは変わらない」と気を引き締めた。

結果がどうなっても動揺しないよう、この冬は野球以上に、人間としての強さを鍛える。毎年、冬に入る前に2回のミーティングを行うが、今冬は4回に拡大した。野球部のモットー「楽しむ、喜ぶ」の確認から始まり、高校野球を取り巻く環境の変化や将来像を考え、自身の力を限界以上に引き出す方法を探求。過去の知内野球部の歴史から今求められるミッションを見つける作業まで、換気など感染予防をし、各3時間計12時間の「セミナー」を実施し、頭を磨いてきた。

吉川英昭監督(44)は「言葉だけでは伝わりにくいこともある」と、大人気漫画「鬼滅の刃」も用いた。主人公の竈門炭治郎が倒した鬼の背景を知り、思いやるシーンから、相手や仲間に共感できる人間性を身に付けるよう学んできた。アイデア満載の“鬼滅の授業”などで鍛え上げた人間力をベースに、進化を狙う。

93年センバツでは町立高として初めて甲子園出場し、人口6700人(当時)の町を盛り上げた。現在の人口は約4200人にまで減ったが、今秋の躍進で再び期待は高まっている。川村は「町の方の支えが秋の4強につながった。もし出場が決まったら全力で恩返ししたい」。まずは入念に心を鍛え上げることに全集中し、28年ぶりの春に備える。【永野高輔】

◆知内-浜松商VTR 町立高初の甲子園出場となった知内は、開会式直後の第1試合に登場。5回までに失策などで6点を失うも、5回に3点を返した。5回までの6失策が響き、相手の8本を上回る10安打放ちながら3-6で敗れた。先発のエース右腕、成沢啓治は150球を投げ9回8安打完投(自責2)。当時の山本鉄弥監督は試合後「甲子園は素晴らしいところだけど、怖いところだった」と話した。

◆知内 52年(昭27)に木古内高校知内分校として開校し、翌53年(昭28)に知内村立知内高校として独立。現在は町立で生徒は181人(女子69人)。野球部は81年創部し、現部員は1、2年生で48人。93年センバツで町立高初の甲子園出場を果たし、開幕試合で浜松商(静岡)に3-6で敗れた。94年春季全道準優勝。学校のある知内町は、演歌歌手・北島三郎の出身地。競輪選手の菊地圭尚が野球部OB。所在地は上磯郡知内町重内984。久保肇校長。