宮城が史上2度目のアベック選出に沸いた。

日本高野連は29日、リモートで選考委員会を開き、第93回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)に出場する32校を選出。東北勢では一般枠2校を宮城勢が占めた昨秋東北王者の仙台育英が2年連続14度目、同準Vの柴田は創部35年目で春夏通じて甲子園初出場。同県からセンバツ2校選出は01年の仙台育英、東北以来、20年ぶり2度目となる。21世紀枠では、八戸西(青森)が初出場を決めた。組み合わせ抽選会は2月23日にオンラインで行われる。

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柴田に「春」がやってきた。野球部は学校から強化指定され、大半の部員が体育科に在籍。近年の夏は18、19年4強、20年は8強と安定した成績を収め、甲子園出場の「夢実現」へもうひと息のところまで来ていた。聖地に一番近づいたのは13年夏。仙台育英に1点差で惜敗し、あと1歩で涙を流した。あの悔しさから8年。歴代OB604人の思いを背負うナインが、ついに歴史を塗り替えた。

午後3時42分、同校会議室に吉報を知らせる電話が鳴った。土生善弘校長(57)が受話器を取り「東日本大震災から10年の節目に出場を賜り、感謝いたします」と緊張した面持ちで返答。雪がぱらつくグラウンドに足を運び、今か今かと待ちわびるナインへ出場決定を報告した。

遠藤瑠祐玖(るうく)主将(2年)は「震災から10年の節目に選んでいただき、復興の力になれるように甲子園で地域の人を元気づけたい」。石巻出身で東日本大震災時、特に被害が大きかった地区に住んでおり「当たり前に野球ができなかった年もあるので、感謝の気持ちでプレーしたい」。喜びをかみしめながら甲子園の土を踏む。

昨秋は県3位から7年ぶりに東北大会出場。青森、福島、山形の1位を破って台風の目になった。決勝は仙台育英に1-18で大敗。エース谷木亮太(2年)が1週間500球の球数制限により、19球しか投げられなかった影響が響いたが、堂々の準優勝だった。

東北大会から3カ月、平塚誠監督(48)は「決勝で大敗、宮城2校というのもあり、選手たちの心は揺れ動いていたと思う」。それでも待ち望んでいた知らせに「若々しさ、たくましさ、清らかさなどを前面に出してさわやかに戦いたい」。学校のキャッチフレーズは「夢実現」と「Never Say Never」。甲子園1勝の新たな夢へどんな困難も乗り越える。【山田愛斗】

○…東北地区の選考に際し、試行期間中である「1週間500球」の球数制限について議論があった。同制限のため、柴田のエース谷木は決勝は先発できず、1/3イニング、19球のみ。仙台育英に1-18と大敗した。同地区の前田正治選考委員長は「東北大会は1週間で日程を消化するため発生した。他の地区では多くが1週間ごとに消化するため、この事象が起こらない。公平性に欠けるのでは、という意見も出た」と、地区により環境が異なる問題を指摘。「球数制限の再検討の際、1つの事象として検討してほしい」と訴えた。