<センバツ高校野球:天理7-1宮崎商>◇20日◇1回戦

剛腕、豪快発進や!! センバツ注目株の天理(奈良)・達孝太投手(3年)が甲子園先発デビューし、宮崎商戦を9回10奪三振1失点で完投した。

193センチ右腕が自己最速の147キロをマークし、161球の熱投。序盤はピンチに苦しんだが、直球主体に組み立て、8回まで毎回奪三振だった。今大会から、全国大会では初の「1週間500球」の球数制限を採用。今秋ドラフト候補が一戦必勝の思いを体現し、名門校の実力を見せつけた。

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甲子園がざわめいた。9回表が終わると、達がマウンドに向かう。リードは6点。8回で150球。試合前、中村良二監督(52)に伝えられた。「最後の最後まで、どういう展開になっても投げるよ」。覚悟はできていた。最終回でも球威は衰えず。144キロを計測した。

聖地での先発デビューは9回1失点で161球完投。「結構、しんどかったです」。序盤は苦しんだ。1回2死一、三塁では西原を内角速球で空振りさせ、外角スライダーで見逃し三振。2回も投球術で危機を脱したが、50球を要した。オリックスのスピードガンで自己最速の147キロを計測しても、変化球の行方が定まらない。「いつもよりフォームが崩れていた。球速を落として低めに」。修正力も光った。昨夏の甲子園交流試合の救援登板より、力強くなった。

193センチの長身で豪快に見えるが、探究心豊かな理論派。振り下ろす右腕が物語る。197センチの阪神藤浪と比べても、さらに真上から腕を振る。「身長がある上に角度があれば、さらに見たことのないストレートを投げられる」。そう感じたきっかけがある。入学当初、近鉄などで活躍した山崎慎太郎投手臨時コーチ(54)に「角度をつけないとプロではやっていかれへん」と指摘された。肘が下がって「押し投げ」になる癖があったという。

キャッチボールの心構えも独特。「膝元を狙って投げるんです」。普通は胸を狙う。だが「胸だと球の角度は真っすぐ。どれだけ(相手と)離れても膝元に投げると、理想的な角度になる。自分で考えました」と唯一無二の角度を求める。

2月下旬から球の回転数や回転軸などデータを分析する機器「ラプソード」を練習に採り入れた。両親に贈られた物で「ダルビッシュさんが動画で使っていて。データを見るたびに、どうしても欲しくて」。大リーグ・パドレスで活躍する196センチの怪腕の練習をYouTubeで見て、刺激を受けた。

「今日の登板は30点くらい」と満足しない。夢は「トップメジャーリーガー」だ。まだ通過点。長身からは、はるか遠くまで見渡せる。【酒井俊作】

◆長身投手の2桁奪三振 193センチの天理・達が10三振を奪った。甲子園で193センチ以上の投手が2桁奪三振を記録したのは、12年夏の藤浪晋太郎(大阪桐蔭=197センチ)以来。天理は90年夏優勝時に南竜次(当時189センチ)谷口功一(同190センチ)の大型投手を擁したが、2人とも2桁奪三振はなかった。72年春優勝の仲根正広(日大桜丘=190センチ)は同夏の1試合8個が最多。