“末っ子”から“一家の大黒柱”へ-。第103回全国高校野球選手権秋田大会は9日に開幕する。甲子園を目指す球児や注目校を紹介する「白球にかける夏 2021」第2回は秋田編です。今春県準優勝した秋田中央は野呂田漸捕手(3年)が、主将、扇の要、主軸としてどっしり座る。同校が45年ぶりに甲子園出場を果たした19年夏は、1年生ながら先発マスクをかぶった。自身2度目の聖地に向けて高校最後の夏に挑む。

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スーパー1年生が2年の時を経て、経験豊富なリーダーに成長した。野呂田は背番号「20」で臨んだ19年春の県大会で正捕手の座をつかむと、同夏には「0」が取れて正捕手の象徴「2」を背負い、秋田大会制覇に貢献。準決勝で高校1号となる満塁弾を含む5打点、決勝で先制打を放つなど勝負強さ、存在感は当時から光るものがあった。

甲子園では立命館宇治(京都)に0-1で競り負け初戦敗退も、強気のリードで先輩投手をもり立て、堂々プレーした。「甲子園だから特別緊張したというのはなく、ワクワクして楽しめた」。初回にいきなり二盗を刺し、5回はバントを冷静に処理して二塁封殺。9回の第4打席で左前に初安打を運んだ。「三振を取ったり、ヒットを打てば大きな歓声が上がり、甲子園はひと味違うすごいところだと実感した。1度行ったら、さらに行きたくなる場所だった」。試合観戦を含めて初の聖地に魅了された。

秋田中央が創立100周年を迎えた昨年は、コロナ禍で夏の甲子園が中止。代替開催の秋田独自大会は2回戦で敗退した。「2年前の夏は甲子園を経験し、去年は2回戦で負けて、一番いいものと一番どん底を味わった」。101年目は頂点しか見ていない。

今春の県大会は優勝にあと1歩届かなかったが、自分たちも驚きの好成績を収めた。「最初は準優勝まで行けるとは正直思ってなくて、1戦1戦を戦った結果が決勝進出につながった」。準優勝の原動力となったアンダースローのエース右腕、湊優成(3年)は、保育園からの幼なじみでコンビ結成9年目。小学4年の時に現在とは逆の立場の「投手・野呂田、捕手・湊」で初バッテリーを組むと、同5年で入れ替わり、それ以降あうんの呼吸を誇る。

倒すべき相手がいる。今春の決勝で屈したノースアジア大明桜に昨秋から練習試合含め5戦全敗。今秋ドラフト候補の153キロ右腕、風間球打(きゅうた、3年)が1度も登板することなく敗れている。「お互いに1年の頃から注目されてきて、やらないのもなしな話。対戦したい気持ちは強い」。秋田中央が第2シード、明桜が第1シード。両校が順調に勝ち進めば決勝で相まみえる。

春の大会からわずか1カ月で勝負の夏を迎える。初戦は11日の2回戦。能代工と能代西が4月に統合し開校した能代科学技術と対戦する。「チーム状態はかなり良いので、準優勝という結果に浮かれず、今までやってきたことを総復習して万全の状態で臨みたい。去年の先輩たちの思いも背負い、絶対に甲子園に行きたいと思います」。野呂田の夏は甲子園で始まり、甲子園で終わる。【山田愛斗】

◆野呂田漸(のろた・ぜん)2003年(平15)9月4日生まれ、秋田県山本郡三種町出身。森岳小3年時に森岳ベースボールクラブで野球を始め、投手、遊撃手を経て小学5年で捕手に転向。山本中では軟式野球部。秋田中央では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒4。遠投95メートル。二塁送球は最速1秒85。右投げ右打ち。173センチ、77キロ。家族は両親と妹2人。