伝統校の「背番号1」の系譜を受け継ぎ、メモリアルイヤーの夏に挑む。第103回全国高校野球選手権宮城大会は7日に開幕。「白球にかける夏 2021」第5回は、今年創部100周年を迎えた仙台商です。83年夏以来の甲子園出場の原動力となるのは1年秋からエース格としてフル回転するサイド右腕・斎賢矢(3年)だ。最大の武器は、磨き上げたキレのある直球。強気な投球で強豪私学に立ち向かう。

準備は万全だ! 夏本番まで1週間を切り、エース斎は入念に1球1球を確かめながらキャッチボールを行った。「組み合わせが決まってから、最後の夏という、実感が湧いてきた。緊張感であったり、これまでとは違うものがある」と率直な心境を口にした。仙台商のブロックには今春のセンバツで8強入りし、夏4連覇中の第1シード仙台育英がいる。順当に両者が勝ち上がれば、4回戦で激突する。「入学してから、育英さんとはあたることもあったんですけど1度も投げたことがない。最後の夏にそういう場面をつくってくれたのかなと、思います」と静かに闘志を燃やした。

マウンドでは物おじせず、堂々と右腕を振る。1年秋には最速138キロをマーク。ヤクルト市川悠太投手(20)、ソフトバンク津森宥紀投手(23)を参考にしながらサイドのフォームを磨いてきた。「ストレートには自信を持っている。キレであったり、質を課題としてやってきた」。ピンチの場面ではもう一段ギアを上げる。気の強い性格は“仙商エース”にふさわしい。「どんな状況でも態度には出さず、強気な攻めをしていきたい。強い相手でも抑えるのがエースだと思います」と自覚は十分だ。

一冬を越え、心身ともにスケールが増した。下原俊介監督(50)が掲げる「冬を制する者は、夏を制する」の言葉を胸に、今冬もひたすら自分を追い込んだ。地元仙台にある大年寺山は野球部にとって“冬の聖地”だ。山頂まで続く255段の石段を階段ダッシュ。足腰は悲鳴を上げるが、下半身は鍛えられ、夏を戦い抜く精神面も強化される。斎は言う。

「冬の恒例トレーニングです。大年寺山を経験することによって、普段の練習からもっと追い込もうと思うようになる。インコースにストレートを投げ込む強い気持ちも持てるようになった」

創部100周年の節目の夏が幕を開ける。初戦(2回戦)は9日、小牛田農林と対戦する。「学校の歴史を変えるためにも、甲子園に出場したい。100年間つないできた(背番号)1でもあるので、そこは意識しながらやっていく」と力を込めた。春は1回、夏は3回の甲子園出場を誇る。メモリアルイヤーに83年夏以来の聖地への切符をつかむ。【佐藤究】