東北6県の大トリで夏の青森大会が開幕した。八戸工が驚異の粘り野球でサヨナラ勝ちを演じ、夏初戦を白星で飾った。

主役の座を奪ったのは、七役大捕手(3年)だった。2点を追う9回2死満塁。わずか3球で追い込まれてからの4球目。外角直球に迷いなく踏み込み、フルスイング。打球は右中間を真っ二つ。土壇場での一打は走者一掃のサヨナラ打になった。「しっかり芯で捉えることができた。打った瞬間に、サヨナラだと確信しました。今まで打った中で一番うれしい」と興奮冷めやらぬ表情で大粒の汗をぬぐった。

「親の力や、監督さんのおかげで打てた」と感謝を口にした。松尾英智監督(42)からは「打つしかないぞ。お前で決めてこい!」の言葉とともに送り出された。9回2死満塁の守備では自らの捕逸でこの回3点目を献上。指揮官のゲキに燃えないわけがなかった。七役は「申し訳ない気持ちだった。監督さんの言葉で『絶対に取り返してやろう』という気持ちが強くなった」。ミスを帳消しにする殊勲打を放ち、本塁上で待ち構える仲間とハイタッチ。四方八方から手荒い祝福を受け、忘れられない1日となった。

打撃のルーツは、父との二人三脚にある。小3時に湊オーシャンで野球を始めた。父と行うティー打撃は日課だった。七役は「毎日300球打っていた。これまでやってきた努力が報われたと思います」と笑顔で話した。次戦は18日、五所川原工・五所川原工科と対戦する。「厳しい戦いを制して、次にもつながると思う」。確実に勢いがつく“劇勝”だった。【佐藤究】