日本一のDNAを持つ右腕が完封勝利を挙げた。

埼玉栄・倉林優介投手(2年)が5安打無失点。小さなテークバックで打者のタイミングを外し、ホームを踏ませなかった。最後の打者を三振に仕留めると、大きく叫んだ。「どっちに先制点が入るか分からなかったので、粘ろうと思いました」。5回まで互いに無得点だった。父啓一郎さんは、全日本モトクロス選手権の元チャンピオン。父親譲りの勝負根性で投げ勝った。

今夏埼玉大会は4回戦で敗退。倉林も背番号11でメンバー入りしたが、思うような結果は残せなかった。「下半身の粘りがなかった」と夏の間、毎日30分間走を行い、下半身を強化。「夏よりも安定して投げられました」と、援護がない中でも得点を許さなかった。

チームにとっても、思いを新たに臨む大会だ。前監督の若生正広氏が7月末に亡くなった。今の2年生たちの代は、もう指導は受けていないが、倉林は「栄のプレースタイルは若生先生のもの。伝統を継いでいこうと思います」と口元を引き締めた。山田孝次監督(38)も「たくさん指導いただいた。感謝を持って、結果で恩返しできれば」と心中を語った。