聖光学院にひと足早く球春到来の知らせが届いた。午後3時15分。校長室に一本の電話が鳴り響いた。4年ぶり6度目となる春の甲子園出場を告げる吉報。赤堀颯主将(2年)は「甲子園でプレーすることを夢にやってきたので素直にうれしい。現段階の力では目標の『日本一』を達成することはできない。センバツが決まったどこのチームよりも、熱い気持ちを持って1日1日を過ごしていきたい」と全国舞台に挑む決意をにじませた。

「力のない世代」。入部当初から、そう呼ばれた現2年生が「センバツの道」を切り開いた。赤堀主将を中心に選手間での結束力を深め合い「自分らには何が足りないのか?」。何度もミーティングを重ねては本音でぶつかり、意見を交わした。昨秋の東北大会で準優勝、県大会から全9試合を戦い、3点差以内の接戦を制した試合は「5」。勝負どころで負けない「無欲の強さ」を示した。斎藤智也監督(58)は「うさぎと亀じゃないけど、今のチームは、亀さんみたいな選手ばかりなんだよな。自分らの代は『力がない』と認め、コツコツとひたむきに努力する選手しかいない」と目を細める。一昨年の夏は福島頂点に立つも、コロナ禍で甲子園は幻に消えた。15連覇を目指した昨夏は準々決勝敗退。地道に歩んできた結果、3年越しとなる聖地にたどり着いた。

今冬は例年よりも降雪量が多く、グラウンドは白い雪に覆われている。選手たちはスパイクではなく長靴に履き替え、木製バットを手に“雪上打撃”に取り組んでいる。1球1球明確な意識付けも行い、打撃力向上に着手する。赤堀主将は「打球の圧力が上がっています」と一冬の成長を実感する。

昨秋からのテーマは「無類のチーム」。赤堀主将は「控えのメンバーとレギュラーに温度差がない、全員が主役になるチームをつくる。無類のチームこそ日本一にふさわしいと思っています」。東北勢初の紫紺の大旗取りへ-。ここまで積み上げてきた真価を発揮する。【佐藤究】