昨秋明治神宮大会4強の九州国際大付(福岡)が、浦和学院(埼玉)に惜敗した。高校通算10本塁打で注目の2年生スラッガー、佐倉侠史朗内野手は3打数1安打1打点。敗れはしたが、存在感を示した春だった。

2-3の8回攻撃。2死満塁で佐倉のスイングは成長を示していた。コンパクトに、打球を三遊間にはじき返した。三塁走者が生還し、同点。二塁走者は本塁でタッチアウトとなったが、追い求めてきた「チーム打撃」を体現した一打だった。「チャンスで1本と言われ続けてきたので、期待に応えることができてよかったです」と、一塁ベース上で拳を握った。

昨秋は「怪物1年生」として注目を浴びた。高校通算10本塁打に182センチ、104キロの巨漢。注目されるがゆえ「本塁打への意欲」ばかりがクローズアップされ、佐倉の頭にも無意識のうちに「本塁打」「飛距離」が根付いた。持ち味だった器用な打撃は、陰に隠れた。

西武で活躍した楠城徹監督(71)は「注目されるのは長打やホームラン。器用でコンパクトなスイングを忘れ、飛距離に陥ってしまった」と話す。佐倉を「てんぐになっている」と表現し、愛のムチを送り続けた。「もう1度自分に立ち戻って、自分の技量に応じたものを持って、試合に臨みなさい」。

そして佐倉は「つなぎの4番」に変わった。広陵(広島)との2回戦では、単打3本を3方向に打ち分け。この日も1発出ればグランドスラムの状況で、外角直球を逆方向に流した。今大会の4安打は全て単打も「長打が出なかったことは気にしていません」とサラリ。貪欲に勝利だけを求めたからこその言葉だった。

準優勝した11年以来の4強入りを逃した。全国で満開を迎える桜とは裏腹に、九州国際大付の佐倉は散った。

「今の3年生とこれる甲子園はあと1回だけ。4番としてもっと成長して、勝利に貢献できる4番になりたいです」

頂点には届かなかったが、成長の跡を残し、今春の甲子園を去る。また再び、その土を踏むために、自身のスタイルを極めていく。【只松憲】

※佐倉侠史朗の「侠」は正しくは、人ベンに峡の旧字体のツクリ