聖光学院(福島1位)が涙の「劇的決着」で、春の東北大会4強入りを決めた。秋田商(秋田1位)に4点のビハインドから逆転勝ち。3-4で迎えた9回1死一、二塁。3番安田淳平外野手(3年)が、右中間を破る起死回生のサヨナラ打を放った。ナインが掲げる今大会のテーマ「魂を込めて毎試合をやり切る」を体現し、18年以来4年ぶりの春みちのく制覇まであと2勝に迫った。次戦は12日、決勝進出を懸けて弘前学院聖愛(青森2位)と戦う。

打球が抜けていくと安田は右手こぶしを突き上げ、一塁ベースを回った。歓喜の聖光ナインが一塁側ベンチから飛び出す。サヨナラ打のヒーローは両手で大きくガッツポーズし、その場で泣き崩れた。「やり切れた。自然と涙が出てきた」。4点ビハインドからの逆転勝ち。逆境に立たされても、ぶれることのない1球に対する執念が最後に勝利を呼び込んだ。

「とにかく食らいついてやる。それだけでした」。3-4の9回1死一、二塁。安田は覚悟を決めて打席に向かった。カウント0-2からの3球目。外角チェンジアップを捉えた。打球は右中間を真っ二つに破り、2人の走者が生還。起死回生の一打に「ホッとした。正直、どこに打ったかも覚えていないくらい、入り込んだ」。一切の迷いを捨て、目の前の勝負に集中した。

名門の中軸を担う責任感は行動に表れる。「自分が主となってやっていかないとチームが勝ち上がれないことは明確だった」。今春センバツ後は1日1000スイング以上を振り込み、自らにハードな練習を課した。斎藤智也監督(59)は「ひたむきにやり込むやつは最後に力を授かるんだろうなと思います。一番苦しい場面でよく打った」とねぎらった。サヨナラ打を含む、4安打2打点と言うことなし。努力はうそをつかなかった。

「夏につながる大会」。そんな認識は一切なく、真剣勝負と位置づける。安田は言う。「この大会にかける思いは、どこよりも強い。夏勝つためにではなく、毎試合、1人1人がどれくらいできるのか。魂を込めてやり切ることを追求している」。4年ぶりとなる春の東北制覇へ、残り2戦。魂のこもったプレーで勝利への執着心をたぎらせる。【佐藤究】