甲南が兵庫史上最速で勝ち名乗りを上げた。過密日程を避けるため、初めて6月第4土曜に開幕。直後に行われた「開幕試合」で明石北を接戦の末に下した。

甲南のエース中翔希(3年)がど根性を見せた。明石北・内薗大輝投手(3年)との緊迫した投げ合い。3回に1点をもらったサイド右腕は8回まで3安打無失点とエンジン全開。完封に向けて突き進んでいたが、8回に右ふくらはぎがつった。9回に入ると左ふくらはぎもけいれん。給水して1球ごとにストレッチしながら続投したが、連打で初失点すると、ベンチからストップがかかった。

試合後の中は自力で歩けず、車椅子で帰りの車へ。「打てるもんなら打ってみろという気持ちだった。完封したくて、無理矢理にでもいきたかったですが、ダメでした。最後の夏は楽しむことを一番大事にしている。バックが声をかけてくれてうれしかった」。笑顔で次戦に切り替えた。

昨秋は地区大会で1回戦を勝ったあと、新型コロナ感染者が出たため2回戦を辞退。今春は初戦で関西学院にサヨナラ負けした。岡山毅監督(42)は「夏も初戦で負けたら兵庫で一番公式戦が少ないチームになるぞ」と選手にハッパをかけていた。

最後の夏はまさかの開幕試合。それも例年ではあり得なかったこの時期だ。くじを引いた冨田悠真主将(3年)は「兵庫で一番短い夏は嫌だとみんなで言っていました。史上最速で注目される状況で勝てたのがうれしい。中からは最後まで投げ切る、勝ち切るという気持ちがバンバン伝わってきた」とエースの力投をたたえた。チームのモットーは「有希友輝(ウキウキ)」。希望をもって、友と輝くという意味だ。甲子園での校歌を目標に、どこよりも長い夏を目指す。【柏原誠】