鹿児島大会は14日、3回戦4試合が行われ、今春センバツ出場校で第1シードの大島が8強進出を決めた。プロ注目で最速146キロ左腕、大野稼頭央投手(3年)が、5安打12奪三振で完封。春夏通算25度の甲子園出場を誇る古豪・鹿児島商をねじ伏せた。

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大野は開始早々からギア全開だった。「相手は良い打線だったので、初回からリミッターを外していこうと」。初回、先頭打者から回をまたいで5者連続三振。最速146キロの直球を武器に、打者の膝下への制球が抜群だった。その後も三振を奪うたびに雄たけびをあげる気合ぶり。5安打12奪三振の今夏初完封で、チームを8強に導いた。

大野個人としても負けられない戦いだった。鹿児島商のエース、三浦颯真投手(3年)は最速140キロを超える本格派右腕。鹿児島では「右の三浦、左の大野」という呼び声もある。大野は「三浦君もいいストレートを投げていた。自分も負けないようにと思いながら。相手に奮い立たされながら投げていました」。ライバルの力投が、左腕の心に火をともし続けた。あふれる闘志を前面に出し、春夏通算25度の甲子園出場を誇る難敵をねじ伏せた。

九州最南端の鹿児島は、この日も気温30度を超える猛暑日だった。かげろうも見られたマウンドで156球。それでも「暑かったですけど…島とあまり変わらないので大丈夫でした!」と、離島のエースはサラリとした。試合がない日は、宿舎近くの温泉でゆっくり体を癒やす。「従業員の方に顔も知られてて、仲良くさせてもらってます」。リフレッシュ方法を笑顔で明かした。

最終回もパワー衰えず3者連続三振締め。三浦に投げ勝ち、力強く拳を握った。春夏連続の甲子園出場まで、あと3勝。「1戦1戦、決勝のつもりでやっていきます」。奄美大島の期待を胸に、大野は左腕を振る。【只松憲】

 

◆大野稼頭央(おおの・かずお)2004年(平16)8月6日生まれ、鹿児島・奄美大島の龍郷町出身。龍南中3年時の選抜チームで離島甲子園に出場。最速は大島入学時から約20キロ増の146キロ。変化球はカーブ、チェンジアップ、スライダー。175センチ、65キロ。左投げ左打ち。

 

▽大島・西田心太朗捕手(3年=7回2死満塁で左翼越えの3点適時二塁打)「(大野)稼頭央も粘っていたし、みんなのためにも打たないといけなかった。その気持ちだけでした」