<高校野球佐賀大会:神埼清明2-1伊万里(延長14回タイブレーク)>◇16日◇3回戦◇佐賀県立

高校野球には勝者にも敗者にもドラマがある。日刊スポーツでは今夏、随時連載「BIG LOSER」で敗れし者の隠れたストーリーにスポットをあてる。

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佐賀・伊万里のエース右腕、森下滉平投手(3年)は真っ向勝負にこだわった。1-1の延長13回裏。無死一、二塁から始まるタイブレークで、1死二、三塁とされた。伊万里ベンチはフォースプレーで守りやすくするため、敬遠での満塁策を指示したが、森下は右の手のひらをベンチに向けた。

「僕が敬遠策を止めました。満塁にして押し出しになったら絶対に悔いが残る。あの場面は三振しかないと思ったので」。

思惑通り、後続を2者連続三振。自己最速を1キロ更新する144キロの直球を投げ込み、ピンチを脱した。「なんとかチームに流れを持ってきたかった。三振に取った時は、『よし。このイニングの仕事は終わったな』と」。

延長14回にも、全く同じ状況でベンチの敬遠指示を再び断った。最後はサヨナラスクイズで負けはしたが「もう、大丈夫です。やりきったと思います」と、右腕はすがすがしかった。

13回1/3を8安打2失点、12奪三振の力投。森下の投じた138球は、高校生らしく、全力そのものだった。【只松憲】

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