哲星(てっせい)が投げて、哲太が打った! 市船橋(千葉)が森本ツインズの活躍で、4回戦注目の一戦を制した。双子の弟でエース森本哲星投手(3年)が好リリーフを見せれば、兄の哲太外野手(3年)がダメ押しの2点本塁打で弟を援護した。性格は正反対で小さいころからけんかが絶えないという2人だが、目標は同じ「甲子園」。野球でシンクロするツインズパワーが、チームを15年ぶり6回目の夏出場へと導く。

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マウンドに立つ弟哲星の背中を、兄哲太がセンターから見守った。「哲星が投げれば抑えてくれる。大丈夫、一番信頼できる投手だから」。9回裏。2つの打球は兄が守るセンターへ飛び、2死。弟は最後の打者を得意の直球で空振り三振に仕留め、試合を締めた。哲太は「思ったところに飛んできましたね」と笑った。

2人は一番のライバルだ。弟は6回からマウンドへ上がると、力強い直球を軸に4回を3安打1失点。兄も負けてはいない。9回2死一塁でスライダーを左翼芝生席へ運び、ダメ押しの2ラン本塁打。弟は「頼もしい1本でした」と感謝した。

しっかり者の兄と、マイペースな弟。小さいころからけんかばかりで「まるで家に怪獣がいるみたい」と母寿道子さん(54)は振り返る。取っ組み合いのけんかは日常茶飯事で、時には流血するほどのケガも…。そんな2人が小3で野球を始めると、あり余るパワーをすべて野球に注いだ。2人でキャッチボールを始め、小5から哲太が捕手を務めると中学までバッテリーを組んだ。「投げたいボールのサインを出してくれるので、ほとんど首は振らなかった。不思議と配球ではけんかしなかった」と哲星。野球を通して見えない絆が生まれた。

今も2人はほとんど一緒に行動しない。しかし、ひそかに思いやる心は強い。哲太が「お前、明日先発だろ? 早く寝ろよ」と声をかけると、哲星は静かに寝室へ向かう。シャイな愛情表現が2人らしい。

星と太陽のように輝く存在になってほしいと名付けられた2人。哲太と哲星。この夏、一番輝く選手になる。【保坂淑子】

○…市船橋には、森本兄弟以外にも1年生に3組の双子が在籍。現在、チームには4組、計8人の双子がいる。海上雄大監督(44)は「たまたまなんですよ」と笑い飛ばすが、いずれも期待の選手ばかり。いつか全員スタメン!? なんてこともあるかも!

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