強いメイショウが帰ってきた。兵庫大会5回戦で、明石商が報徳学園を延長戦で破り、甲子園で4強入りした19年以来3年ぶりに8強に進んだ。狭間善徳監督(58)のもと、チーム一丸で今春近畿4強の相手を徹底研究。エースの配球や打者の打球方向などを読み切り、接戦を制した。2年連続代表を狙う神戸国際大付も8強入りした。

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甲子園で全国区になった“狭間ガッツ”が、ほっともっと神戸でさく裂した。8回裏2死二塁を切り抜けてジャンピングガッツポーズ。9回裏を3者凡退で締め、熱くこぶしを握った。指揮官の喜怒哀楽に、応援団も呼応。「奇跡が起こったね。チームが1つになりました。スタンドを含めて、みんなが1つの方向を向いている」。監督は胸を張った。

延長戦で粘り勝った。10回裏、申告故意四球を含む3四死球で1死満塁。サヨナラの大ピンチを迎え、狭間監督は野口智矢(2年)を3番手で救援に送った。「ここは打ちに来る。3、4番は力入ってる。フライ打ってくれへんかな」という思いが野口の直球に乗り移り、連続フライアウト。ピンチを脱した直後、11回2死二塁で松村青空(そら)捕手(3年)の打球を相手二塁手がはじき(記録は安打)決勝打になった。

19年甲子園春夏4強をけん引した中森俊介(ロッテ)、来田涼斗(オリックス)のような投打のスターはいなくても、勝利への執念がチームに息づいている。報徳学園との対戦が決まり、相手を丸裸にするのに費やした時間は、狭間監督によると「ぼくは40時間、選手は20時間」。報徳学園バッテリーの配球、打者の苦手な球種やコース、打球の飛ぶ方向を洗い出し、守備位置を細かく変えて安打性の当たりをアウトに。

注意も怠らなかった。1死一、二塁、2死満塁と初回だけで2度も伝令を送り、先発のエース常深(つねみ)颯太(3年)を落ち着かせた。「ぼくが思うには(勝因は)初回」と監督。底力を見せた、会心の勝利だった。【堀まどか】

▽明石商・野口(延長10回裏1死満塁で3番手で登板し、3、4番を飛球に取って大ピンチを切り抜け、11回も無失点) 10回は全球真っすぐで押していきました。

▽明石商・松村(延長11回に決勝打) (決勝打は)今までで一番うれしかったです。ぼくは喜多さんにあこがれて、明石商で野球をやりたいと思うようになりました。