<高校野球京都大会:龍谷大平安12-5京都外大西>◇25日◇準決勝◇わかさスタジアム京都

今秋ドラフト候補で高校通算54本塁打の京都外大西・西村瑠伊斗(るいと)投手(3年)が勝負の厳しさを味わった。8点差をつけられた7回2死一塁。あと1死でコールド負けの瀬戸際で打席が巡ってきた。その直前、上羽功晃監督(52)の伝言が伝えられた。

「センター、左中間にホームラン狙ってきていい」

初めての指示だった。2点取らないと夏が終わる。気合が入った。だが、バッテリーは勝負しない。ストレートの四球。「あれだけ点差があっても勝負してくれないと。悔しかった」。苦笑いで、歩くしかなかった。5回2死三塁の同点機も申告故意四球。右肩の不調で登板もできない。夏の最後は無力感だけが募った。

天性のミートを見せたのは4回だ。内角球を右中間フェンス直撃三塁打。今夏は大会最多タイの4発を放ち、自信を深めた夏にもなった。この日もスカウトが殺到。西武渡辺GMは「打者としてインコースのさばきが天才的」と評した。

プロ志望届提出を明言し「プロに入って活躍できるように。切り替えられないけど、何とか切り替えて。ずっと目指している夢がある。打者で勝負していきたい」と前を向いた。7回、悔しい四球の後、仲間が4点取ってくれた。一生忘れない敗北が長距離砲を強くしてくれる。【酒井俊作】

▽中日大野雄(京都外大西OBで客席から応援)「よく頑張ったと思います。西村選手は京都の(本塁打)タイ記録をつくったのは知ってて、注目してました。打席の雰囲気もあって、すごい打者だと思いました」