主役は俺や! 京都国際が森下瑠大投手(3年)の投打にわたる活躍で2年連続2度目の優勝を飾った。今春のセンバツは開幕前日に新型コロナウイルス感染拡大のための出場辞退。悲嘆に暮れたナインは春の悔しさを力に変えた。左肘を痛めていたが、今大会初先発で6回1失点&逆転の決勝2ランと規格外の活躍で復活をアピール。甲子園では昨夏の4強超えを目指す。

森下は右翼から全速力で歓喜の輪に飛び込んだ。泣きじゃくる仲間を見て涙が出た。「センバツで悔しい思いをして、夏にかける思いは他のチームより上だった。支えてくれた人がいる。感謝の思いでいっぱいです」。大一番で世代屈指の左腕が能力を開放した。

今大会初の先発だった。春に左肘を痛め、約2カ月間のノースロー期間を経て2日前の準決勝でリリーフで今夏初登板したばかり。「結構、ぶっつけ本番でした」。迷わずアクセルを踏んだ。初回先頭に本塁打を許したが、その後は速球を軸に粘りの投球。6回1失点で交代した。「評価できる球はなかったけど、要所で気持ちで押せました」。

バットでも圧巻の仕事を見せた。0-1の4回無死一塁で右中間場外に飛び出す逆転2ラン。高校通算21号。「あれで一気に乗れた。自分でもいい本塁打だったかなと」。千両役者の一振りだった。7回にもダメ押しの左前打を放ち、計3打点を挙げた。

4カ月前、甲子園の前日に出場辞退という前代未聞の悲劇があった。代替出場した近江はセンバツで準優勝。自宅でテレビ観戦していた森下は「あそこに自分たちがいるはずだったのに」と歯ぎしりした。チームもどん底に落ちた。6月8日、近江サイドからの打診で練習試合が実現。森下は投げられなかったが、大きな転機になった。主将の辻井心捕手(3年)は「近江の選手は楽しんで野球をしていた。僕らも同じようにしようと決めました」。近江との交流が夏へのスイッチになった。試合中、小牧憲継監督(39)から「ここで負けたら近江とも大阪桐蔭とも戦えないぞ」と声が飛んだ。

昨夏は2年生エースとして全国4強に導いた森下。「後悔のないように、投球でも打撃でも、思い切り暴れまくりたいです」。甲子園の主役に名乗りを上げた。【柏原誠】

▼森下瑠大(もりした・りゅうだい)2004年(平16)9月19日、京都府福知山市生まれ。昭和小1年から昭和ガッツで野球を始め、南陵中では福知山ボーイズに所属。3年時に全国大会出場。高校2年時に春夏甲子園で2試合ずつ先発。夏は初戦の前橋育英戦で完封するなど4強入りに貢献。178センチ、75キロ。左投げ左打ち。

◆京都国際 1947年(昭22)に京都朝鮮中として開設。58年に学校法人京都韓国学園に。63年高等部が開校。04年に日本の学校教育法第1条の認可を受ける。日韓両国から中高一貫校として認められ、京都国際中学高等学校となる。全校生徒138人(女子66人)。野球部は99年創部、部員62人。甲子園は夏2度目、春は1度。今春も選出されたが大会前に辞退。京都市東山区今熊野本多山町1。朴慶洙校長。