“最北の球児”が聖地で躍動する。第104回全国高校野球選手権に出場する旭川大高の一、三塁コーチを務める岩本光粋内野手、浅野悠斗投手兼内野手(ともに3年)は日本最北の中学、稚内宗谷中出身。宗谷岬に近く、サハリンが見える中学から、甲子園出場を目指し、旭川大高に進学した。卒業後は家業を継ぎ漁師を目指す2人が、的確な判断と声でチームをもり立て、大阪桐蔭戦(10日)勝利につなげる。

かつて宗谷村(55年に稚内市に編入)と呼ばれた最北地域からやってきた2人が夢の舞台に立つ。一塁コーチの岩本は「とにかく声を出して盛り上げるのが役目」。得点に直接絡む判断が求められる三塁の浅野は「旭川大高は本塁に突っ込む判断は走者がする。僕の役目は止めること。しっかり打球を見て、いい指示を出せたら」と思い描いた。

岩本は親戚がOBだったことと、体験練習にきたときに先輩たちが「頑張れよ」と優しく声をかけてくれたことがきっかけだった。浅野は友人に勧められ見学に来て、端場雅治監督(53)の指導を見て「ここなら甲子園を狙える」。最終的には2人で「一緒に甲子園を目指そう」と進学し、最後の夏、夢をかなえた。

岩本は北大会準々決勝の9回に代打で出場し1安打。聖地でも代打での出番に備える。浅野は春の地区予選後、守備練習で飛び込んだ際に右手首を骨折。春は背番号7で中軸を打つこともあったが、夏は背番号16で主に三塁コーチとして奮闘している。「応援してくれる人への感謝を示せたら」と気持ちを高ぶらせた。

家業が2人とも漁師。夏休みには、岩本がカニ漁、浅野はタコ漁の船に乗り「樺太のあたりまで行って手伝っていた」という。硬式野球は甲子園でひと区切りつけ、卒業後は漁師になる。岩本は「これからは両親へ恩返し」。浅野は「兄も漁師。負けないように。父に早く追いつけるように」。漁の繁忙期のなか駆けつける家族の前で、成長した姿を披露する。【永野高輔】