新型コロナウイルスの集団感染と判断され、登録メンバーを大幅に変更した県岐阜商が、初戦で敗退した。

背番号11で右腕の山口恵悟投手(2年)が先発。1回1死三塁で福谷宇楽内野手(3年)に先制の右前適時打を浴びた。なおも、1死一、二塁のピンチを招いたが、踏ん張った。

2回に捉えられた。1死一、二塁で大西悠斗外野手(3年)にカーブを拾われ、左前適時打で加点された。さらに満塁のピンチを背負い、福谷に中前へ2点適時打を浴びて降板した。2番手の小林希投手(2年)も満塁のピンチで押し出し四球を与え、この回、4点を失った。3回は失策を重ねて3失点。前日8日、鍛治舎巧監督(71)は「2本柱の井上、小西もいない。(岐阜大会決勝で)サヨナラ本塁打の村瀬もいません。(試合)展開を読めないのが正直なところ。試合慣れしていないのはないが、場所は甲子園。雰囲気にのまれないように」と話していたが、不安が的中した格好だ。

この日は先発メンバー9人のうち、3人が新たに登録された選手で、主力のバッテリーらが離脱している状況だ。社に、序盤から一方的な展開に持ち込まれた。

同校は3日深夜に複数の体調不良者が発生。4日の開会式リハーサルを欠席したが、メンバーなど7人の感染が判明し、6日の開会式も欠席した。感染者は増えたが、岐阜から下級生を中心に14人を招集。7日からシート打撃などの練習を再開していた。一部改定した感染拡大予防ガイドラインに基づき、登録選手18人のうち10人を入れ替え、PCR検査の全員陰性確認をへて出場が可能になっていた。

本来の布陣で臨めなかった試合でも、ナインは攻守に力を尽くした。0-9の7回の守り。相手3番の打球を、右翼の高橋一瑛(かずあき)外野手(2年)はダイビングで好捕。入れ替えで新たにメンバー入りした2年生の好プレーを、ベンチの部員たちが拍手でたたえた。8回には待望の1点。先頭の高井咲来(さく)外野手(2年)が左翼への二塁打を放ち、1死三塁から神納朋季捕手(1年)の三ゴロで1点をもぎとった。高井も新たに加わったメンバーだった。

1-10と大差はついたが、最後まで懸命にプレー。試合後、鍛治舎監督は、まず第一声で「今年の3年生は本当にコロナに翻弄(ほんろう)された、苦しい世代だったけれども、本当なら出られなかったかもしれない中、こうして試合を戦うことができた。尽力してくださった皆さんに感謝したい」と、言葉を選ぶように話した。さらに「投手陣の中で、唯一残った3年生の古賀が持ち味を出してくれた。急きょ、メンバーに入った選手たちもよくヒットを打ってくれた。次の主力を張る選手たちが、本当にいい経験を積んでくれた」と、温かい目で選手たちをねぎらった。

敗戦も、下級生たちは甲子園の大舞台を経験することができた。鍛冶舎監督は「8つの四死球、4つのエラー。下級生たちは悔しいものを持ち帰り、必ず、必ず次につなげてくれると思っています」と、新チームへ期待を寄せた。

<県岐阜商のコロナ経過>

◆8月3日 抽選会に主将の伊藤颯希外野手(3年)が出席。「去年の分まで勝ち上がって全国優勝を狙えるように」と意気込んだ。

◆同4日 複数選手の体調不良者が出たため、5日の開会式リハーサルを欠席すると、大会本部が発表。

◆同5日 新型コロナ集団感染と判断。鍛治舎巧監督(71)は「ここでこういうことになるのが信じられない。非常に残念」と話した。発熱や喉の痛みを訴える選手が出ているといい、「すいませんでした、とおえつする選手ばかり。君のせいではないと伝えた」。

◆同6日 大会本部が新型コロナ感染拡大予防ガイドラインを一部改定。これまで集団感染の場合、日程変更で対応する規定だったが、新たに試合前の72時間以内に陰性と確認された部員なら誰でも、入れ替えによって出場可能になる措置を導入。鍛治舎監督はオンライン取材で「ウチから(感染者を)出してしまったが異例の対応をしていただいた。感謝申し上げたい」。

◆同7日 兵庫・西宮市内で練習を再開。約20人の選手が参加し、シート打撃で試合勘をチェックした。

◆同8日 予定通り9日第4試合で社と対戦すると、大会本部が発表。登録選手18人のうち10人を入れ替えた。

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