東北勢初の「日本一」まであと2勝だ! 仙台育英(宮城)が、愛工大名電(愛知)を6-2で下し、準優勝した15年以来、7年ぶりの4強を決めた。序盤から機動力を生かした攻撃が光り、森蔵人内野手(3年)が先制中犠飛を含む2安打1打点。岩崎生弥内野手(3年)は2安打2打点でチームに勝利をもたらした。聖光学院(福島)は、10-5で九州学院(熊本)を下し“夏5度目の正直”で春夏通じて初の4強入り。初回に打者一巡の集中打で一挙5得点。先発野手全員安打の13安打を放ち、71年に準優勝した磐城以来、県勢51年ぶりの準決勝進出を果たした。両チームは決勝進出をかけ、20日の準決勝第1試合で激突する。

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仙台育英ナインが“広瀬川の流れ”のごとく、縦横無尽に塁間を駆け抜けた。1回裏、三塁側スタンドから「青葉城恋唄」が鳴り響き、攻撃開始。1番橋本航河外野手(2年)が四球で出塁し、続く山田脩也内野手(2年)の初球にスタート。山田は左中間に二塁打を放ち、無死二、三塁にチャンスを広げた。最後は、今夏初めて3番に起用された森が先制の中犠飛。3人で瞬く間に先制点を挙げた。

呼び込んだ勢いはそう簡単に渡さない。2回2死三塁。9番尾形樹人捕手(2年)の打席で須江航監督(39)が動いた。

「愛工大名電(三塁手)の大森(瑛斗)君が非常に守備が良くて。肩が強い選手で、ポジションを後ろめに守る傾向があった。投手は左だったので、準備してここでやろうと」

カウント1-1で尾形が意表を突くセーフティーバント。後方に守っていた大森三塁手に捕球させる適時内野安打となった。続く橋本の打席の際に二盗。中前適時打で生還した。

勝負強い「切り札」はこの日も存在感を見せた。2、3回戦は代打で適時打を放った岩崎が「6番一塁」で先発出場。3回と5回に2打席連続で左前適時打を放った。須江監督は「自分のやることが整理できているので技術と心のバランスが非常に素晴らしい。打つ雰囲気しか打席の中でまとってない」と高評価した。

序盤の3イニングだけで3盗塁。選手と打順を組み替え、積極的な走塁を絡めた攻撃で試合の主導権を握った。「控えの子たちが(相手を)分析して、準備したことが全部出せた。実行したスタメンの選手もすごいが、チーム一丸の攻撃だった」と“総力戦”を強調した。

これで準優勝に輝いた15年以来の4強に到達。17年の8強に貢献した利輝さん(23)を兄に持つ山田は「(兄を超えて)うれしい気持ちはあるが、ピッチャーのレベルやチームの執念という部分でここまでの試合と変わってくる。一戦必勝で頑張りたい」と気を引き締めた。「ここから先は甘くない。変わらず丁寧に戦いたい」と須江監督。同じ東北勢の聖光学院(福島)との準決勝でもベンチとスタンド、全員の力を結集させて「王手」をかける。【相沢孔志】