ついに、深紅の大優勝旗が白河の関を越えた! 東北の雄、仙台育英(宮城)が、下関国際(山口)を8-1で下し、悲願の東北勢初優勝を飾った。0-0の4回1死三塁。4番斎藤陽外野手(2年)が右前へ先制適時打を放ち、大一番で主軸の責務を果たした。昨夏の宮城県大会は4回戦で仙台商に敗れ、最後の打者になった。悔し涙に暮れたあの日から1年。憧れの舞台でうれし涙を流し、日本一の達成感をかみしめた。

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東北勢悲願の日本一実現を果たし、ベンチ前で斎藤陽の目には涙があふれた。

「いろんな感情が込み上げてきた」。

「十字架」を背負い続け、はい上がってきた。昨夏の宮城大会、仙台商との4回戦。1年生レギュラーで斎藤陽は出場していた。1点を追う9回2死一塁で打席が回るも、結果は右飛。甲子園への道は閉ざされ、目頭を押さえ、その場で崩れ落ちた。今でもその記憶は残る。「ずっと苦しい思いをしてきた」。悔しさを胸に刻み、バットを振り続けた。2度と同じ思いをしないために。

歴史的な一戦で、積み重ねた努力の成果を発揮した。0-0で迎えた4回1死三塁。「ここで絶対に自分が打たないと」。強い覚悟を持って、左打席に立った。初球だ。内角スライダーを振り抜き、打球は一、二塁間を破っていく。8得点の口火を切る貴重な先制打を放った。「長打が打てるチームではない。低い打球でつなぐ打線」。大振りを捨て「低く、強く」をチーム内で徹底させた。

100年を超す高校野球史に風穴をあけ、仙台育英ナインが最高のフィナーレを迎えた。「日本一をつかめて最高の夏になった」。1年前に味わった挫折を乗り越えた分、喜びと達成感もひとしおだった。

新たな景色を目指し、新チームが始動する。今大会のベンチ入りメンバー18人中2年生は8人。斎藤陽は言った。「また、ここに戻り、先輩たちとつかんだ日本一をまた取りたい」。連覇への挑戦が始まる。【佐藤究】

▽ロッテ西巻(仙台育英OB)「深紅の大優勝旗が白河の関を越えるのは僕たち東北の人たちの悲願でしたが、これまで誰もが成し遂げられなかった夢を後輩たちが実現させてくれたことに感動をしています。先輩としてうれしいです」

▽ロッテ平沢(仙台育英OB)「長い歴史の中で東北に初めて優勝旗を持ち帰ってくれた後輩たちを誇りに思いますし、自分のことのようにうれしく思います。これから3年生の皆さんは別々の道を歩むことになると思いますが、今回の優勝という経験を生かし、自信を持って、より成長をしてほしいと思います。感動をありがとうございました」

▽阪神馬場(仙台育英OB)「優勝おめでとうございます。また、東北勢としての初優勝おめでとうございます。仙台育英らしく、チームの団結力で勝ち抜く選手たちを見る度に、元気をもらえました。僕も、後輩たちの頑張りを力に頑張りたいと思います」

▽阪神熊谷(仙台育英OB、自身の練習を終えた後に甲子園で応援)「優勝おめでとうございます。ハツラツとしたプレーで勝ち進む姿に僕も刺激をもらっていました。また、東北勢の代表として、悲願の初優勝を勝ち取ったことについても、大変誇らしく思います。これからも、ひとりの卒業生として、仙台育英の良き伝統が引き継がれていくことを願っています。本当におめでとうございました」

 

【まとめページ】仙台育英「白河越え」東北勢悲願の初V 記事&各界から祝福の声たっぷり