開幕から連勝で臨んだ日本代表は、大会3戦目にして初めて追い付かれ、最後は内海優太内野手(広陵)のサヨナラ犠飛で試合を決めた。今夏甲子園大会で山田陽翔投手(近江)を、今春センバツで内海を見てきた日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(62)が、投打のキーマンのプレーを解説する。

2点リードの7回表(最終回)に大会初登板した山田は、あまり良くない印象だった。右打者へのスライダー、カットボール、そして左打者への外のツーシームは良かったが、真っすぐにスピードもキレも感じられない。画面の表示では138キロ前後。甲子園で見た球威と比べると、迫力が足りないように感じた。

四球と二塁打で1死二、三塁。右打者にいい当たりの左前ヒットを許す。打たれた直後、山田のバックアップが遅れた。左翼と捕手の延長線上でバックネット付近へ走り、外野手の返球がそれた時のバックアップに備えるのが基本だが、左翼浅野の送球が大きくそれた時、山田はまだ捕手松尾の数メートル後ろだった。

この場面、三塁走者の生還は当然だが、二塁走者の生還は防ぎたい。強い打球だっただけに二塁走者も簡単にはホームに帰れない状況だった。だが、浅野のバックホームが松尾のはるか上を越える悪送球となり、そのままバックネットまで転がる。山田が急いで拾いに行き、ホームへ投げるがこの送球もそれ、同点を許してしまった。

大会初の登板で、2点リードを主将としてしっかり守り、3連勝につなげたい。甲子園でもそうだったように、多くのものを背負いながらの初登板は厳しいものになった。ただ、同点を許してさらに1死二塁から、連続内野ゴロで逆転を許さなかったのは大きかった。この粘りがその裏のサヨナラにつながったが、山田としては本来のピッチングができず、基本の動きも瞬時にできないなど、反省すべきものが多かった。

チームとしては追い詰められた状態だったが、これを救ったのが内海の冷静なバッティングだった。エラーと四死球で1死満塁。内海はカウント2-2から外のツーシームを確実にミートして、いい当たりのセンターライナー。追い込まれたらセンターから逆方向という意識が見て取れた。この打球を定位置よりもやや前よりに守っていたセンターがジャンプして捕球するが、返球をあきらめ、そのままボールを足元にたたきつけて、決着がついた。

7回裏、無死満塁から松尾が空振り三振。ここで内海が内野ゴロを打たされ併殺にでもなれば、日本チームとしては最悪の展開になるところ。三塁走者をかえすため外野に飛ばすことを最優先に考えた内海のバッティングは、状況判断も技術的にも光る内容だった。(日刊スポーツ評論家)