日米通算4637安打のイチロー氏(49=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が4日、富士(静岡)のグラウンドで、2日続けて同校の野球部員を指導した。

 

<イチロー氏の2日目(4日)指導ドキュメント>

 

富士山は山頂に少し、雲がかかる。

 

午後0時20分 イチロー氏到着。集合している選手の前で「おはようございます。体はどう? 昨日、一番の課題は元気を出すこと。今日、元気出して、頑張っていこう!」

 

午後0時25分 一緒にストレッチなどウオーミングアップ開始。前日に「アップの際の意識は?」と質問を受けており、その答えをここで伝える。「アップは野球の練習に入っていく準備段階。100%の力で走るのは最後の1本でいい。次の移行に向けて準備段階。アップの考え方はそれでいい」。ダッシュも生徒と一緒にこなし、その後はキャッチボール。生徒からの質問に答える形でアドバイス。「自分の中の遠投よりも遠いところでやってしまうと形が崩れてしまう。怖いのは形が崩れること。形をキープできる距離を覚えて」、「バッティングと同じ。ここ(腕)を走らせる。ためて、(左肩の)開きが早いと腕が出ていくしかない。(開きを)我慢して走らせるイメージ」

 

午後1時 30スイングのティー打撃の後、フリー打撃を実演。9本の柵越え(右翼の簡易ネットまで約95メートル)。生徒は周囲から見て「うわ~」、「お~」、「打球が高い」など、感嘆の声があがる。「よっしゃー」と言って打ち終わる。「選球眼がよくなるには」の質問には、「選球眼、という言葉が僕は嫌いで、目じゃない。体でヒットを打てるか判断してほしい。選球“体”。体でボールを打つかどうか。ボールをよく見て、と危険なんですね、この動き(最後までボールを追う動き)。キャッチャーが捕るまで見る、とか絶対的ダメ」。

午後1時50分 フリー打撃が終了。ブルペンに行き、投球練習を後ろから見守り、途中から実際に打席にも立つ。右下手投げの生徒には「俺、嫌いなピッチャー。おもしろいです」。投球練習後には近寄り「真ん中付近に投げてサイドに散らばっていくイメージで練習したらいい。大胆にストライクを取る練習をしたらいい」。右の本格派のエース水越壱成投手(2年)には、ツーシームの握りを教える。

午後2時30分 外野でイチロー氏も加わり1カ所ノック。同氏は大きな声を出しながらノックを受け、途中、生徒全員にアドバイスを送る。「まず大事なのはリアクションよりも(打球)判断。動きながら判断してしまう場合、判断して(から)動くよりも結果的に遅くなってしまうことがある。(最初に)止まって判断する。その姿勢はランナーの時と同じ。この姿勢(膝を曲げ重心を落とす姿勢)。膝が伸びていると、判断するまでに時間がかかる。僕の動きをそういう視点で見てください。判断したら直線で追う。判断するために最初の形をつくる」。「最後、1本取ります」と言って、ノックのトリを務める。簡単な飛球に「これは簡単すぎるね」と言って、おかわりを要求。ただ、なかなか難しい飛球が来ず、最後は4球目を背面キャッチ。生徒からは「おお~」の声と拍手が起こる。

 

午後3時5分 イチロー氏が内野ノック。生徒は三遊間で守った。前回の都新宿と同様に1人10本。ただ、8球目以降にエラーするとまた8からカウント。8球目以降は無失策でいかないと終われないルール。「僕の体力が持つ限りやろう」。最初は内野手だけの予定が、途中で「外野手もやりたい」とイチロー氏にお願いし、結局19人全員で。グラウンド整備をする時間も含め、合計約50分。ノックでバットを振った回数は449スイング。「前に!」や、「ナイスプレー!」、「諦めるのが早い!」「頑張れ!」など、大声で選手を叱咤(しった)激励した。生徒のひとりは涙ぐんで感謝し「いい思い出になりました」。

午後4時20分 富士山をバックに記念撮影。