第95回記念選抜高校野球大会の出場校が27日に発表される。センバツ企画「センバツも密なので」では、3校選出される21世紀枠候補を紹介。氷見(富山)は。プロ注目の青野拓海投手(2年)を擁し、部員17人の結束力で昨秋は北信越大会まで進んだ。人口減少率の高い同市で地元の期待も大きく、30年ぶりの吉報を待っている。

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真っ白な立山連峰を富山湾ごしに望む氷見市。17人の選手は、もくもくと全身から湯気を立ち上らせていた。プロも注目する投打の主軸、青野は「最近は甲子園に出られていない。地元民として悔しいです」と力を込めた。

過去2度の甲子園出場があるが、93年春を最後に30年遠ざかる。同市は県内でも人口減少率が高く、小中学校は計14校まで減少。17人は幼なじみのような関係。そんな関係性が今のチームの原動力になっている。

昨夏の富山大会決勝の高岡商戦。9回2死2ストライクから逆転された。あと1球…。3年生とは敬語も使わないほど仲が良かった。泣き崩れる選手を見た村井実監督(59)はわずか3日後から遠征を組んだ。「あの負け方は高校生には酷すぎた。余計なことを考える暇なく追い込もうと」。悪夢を忘れさせたい一心だった。

旧チームのレギュラー4人ら力のある選手が残った。富山県を猛打で制すと、圧巻は北信越大会1回戦の遊学館(石川)戦。0-0の延長12回に正水海成外野手(2年)の2ランで勝ち越し。青野は炎の192球で完封した。翌日の松商学園(長野)戦は青野が先発できず敗れたがポテンシャルを示した秋だった。

校外を走れば「甲子園行ってくれよ」と声がかかり、12月に開いた野球教室では小学生に「知ってるよ」と言われ、驚いた。地元の製麺所からは補食のための名物氷見うどんが差し入れされる。主将の大沢祥吾捕手(2年)は「地元の期待をとても感じています」。そして、引退後も練習を手伝ってくれる3年生のために。厳しい寒波のさなか、じっと春を待つ。【柏原誠】