もう1度、必ず戻る-。東北(宮城)が開幕試合で山梨学院に競り負け、04年以来19年ぶりのセンバツ勝利を逃した。最速145キロのエース右腕・ハッブス大起(3年)が2度の満塁を抑える力投を見せたが、5回途中2失点で降板し、敗戦の責任を背負った。米国人の父と日本人の母の間に生まれ、パドレス・ダルビッシュ有投手(36)に憧れて入学した本格派。大舞台での敗戦を糧に、昨夏甲子園優勝校の仙台育英などがひしめく夏の宮城大会を制し、今度こそ勝利の喜びを分かち合う。

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昨秋関東大会王者の山梨学院を相手に、初回を3者凡退、2回2死満塁を抑えたハッブスだったが、3回に再び試練が訪れた。制球が安定せず、1番の左前打から、2者連続四球で無死満塁に。「自分は1人で正直危ないと思っていた。弱気になった」が、チームメートが助けてくれた。「大丈夫! ハッブスなら抑えられるから」。内野手の前向きな言葉を受け、強豪の4、5番を三振。最後は遊ゴロで攻守交代し、ガッツポーズ。エースの意地が失点を許さなかった。

4回1死三塁の得点圏もしのいだが、4度目のピンチで崩れた。5回2死二塁、カウント2-2の5球目。投げ込んだ直球は捕手要求の内角とは逆球で、三遊間を破る適時左前打で先制された。続く2死一塁では右中間に適時二塁打を浴びて降板。拍手が送られる中、甲子園のマウンドを1歩ずつ離れていった。仲間を信じて戦況を見守るも、願いは届かず初戦敗退。聖地での試合を終え「自分は大したことがない。まだまだだなと痛感した」。

野球をしていた2歳上の兄に憧れ、競技を始めた。家族4人で応援に駆けつけた父チャーリーさん(53)は「野球をやりたいと本人が言った時はうれしかった。一生懸命頑張ってほしいと思いました」。小学生時代にはヤクルトジュニアに選出され、今では甲子園出場に導くエースに成長した。「ここまで成長すると信じていましたけど、驚きました。いいチーム、いい指導者に恵まれました」と目を細めた。

今度は勝利の瞬間を-。佐藤洋監督(60)は「よく粘ったが、いつもと感覚が違った。彼にとってすごく大きなステップになることは間違いない」と期待する。ハッブスは「自分が悔しいというよりも周りを悲しませたことに責任を感じる。必ず夏はもっと喜ばせるため、甲子園で1勝したい」。決意を新たに、悔しさを晴らす夏に向かう。【相沢孔志】

■2番手秋本「いい試合になった」

東北の“無失点男”が聖地で失点した。昨秋公式戦10試合に登板し、30回1/3を無失点の秋本羚冴(りょうご)投手(3年)が5回途中から2番手で救援登板。1点を追う7回1死二、三塁で左犠飛を打たれ、突き放された。「無失点ピッチングを続けてきて気にしながらやっていた。次につながると思ったので今日はいい試合になった」と前を向いた。