昨夏、甲子園出場の聖望学園が春の県大会、初戦に臨み、逆転負けを喫した。4月1日に就任したばかりの飯牟礼俊昭監督(58)は、初陣を飾ることはできなかった。

初回にスクイズで1点を先制し、2回には1死二、三塁から左犠飛で1点を加えて手堅く試合をリードした。しかし、4回に先発の橋爪雅治投手(3年)が春日部東打線につかまり、逆転を許した。5回には同点に追い付いたが、9回、抑え投手が踏ん張りきれず、2点を勝ち越され敗戦した。

飯牟礼監督は「いい部分も懸念していた部分も出ちゃったな。野球って正直ですね。今まで彼らが練習してきた部分と、今の心を合わせながら、春に間に合わせたかったんですが」と、話した。

秀明(埼玉)、御殿場西(静岡)でコーチ、鹿児島城西、日本航空第二(現日本航空石川)、岐阜第一で監督を務め、鹿児島城西では元DeNAでトヨタ自動車の細山田武史を育成するなど、指導には定評がある飯牟礼監督でも、指導期間があまりにも短かった。今月1日に就任したばかりで、指導を始めてまだ1カ月もたたない中での公式戦。「顔と名前、プレースタイルを掌握しきれていないんです」と苦笑いした。

昨年11月に部内の不祥事により前監督が退任し、選手たちは同12月から指導者が不在のまま練習を続けてきた。「まずは選手に聞きながら今に至っている状態。彼らがやってきたことを肯定、尊重しながらやっているんです」と、まだまだ手探りの状態が続いている。

試合中も、選手の言葉に積極的に耳を傾けた。「今はどう思う?」「このプレーはこうした方がいいんじゃないか?」。笑顔でベンチを盛り上げ、好プレーには握手で迎えた。「やるのは選手たち。いかに選手が踊ってくれるかを日々模索しながら選手のモチベーションを上げられるような指導をしていきたい」と、指導方針を明かした。

飯牟礼体制は始まったばかり。「力がないということを自覚をしてくれれば、また夏が楽しみになりますね」と、一からのスタート、そして夏までの選手の成長に期待した。【保坂淑子】