山形県大会は開幕戦で左沢(あてらざわ)が高畠に5-1で勝利。15年以来8年ぶりの夏1勝を手にした。

のどから手が出るほどほしかった1勝だった。8年ぶりの「夏1勝」に加え、公式戦の勝利も山口博之監督(58)が就任した18年から5年間で初めて。やっとつかんだ1勝に、捕手の井上利玖主将(3年)は「ずっと夏1勝を目標にしてやってきた。チーム一丸となって達成できて本当に良かったです」と喜んだ。

昨秋の地区3次予選では山形学院に0-43。7失策と守備が乱れて大敗。そこからチームは守備の強化に取り組んできた。この日は3失策したものの、後続をしっかり締めるなど、全員でカバーし合い、10安打1失点。最後の打者の三ゴロが一塁に送球されるのを扇の要から見届けた井上は、「喜んでいるのか何なのか分からないぐらい真っ白だった」。整列して聴く初めての校歌でようやく勝利の実感が湧くと、感極まってうれし涙を流した。井上は「僕みたいに泣いている人はいなかったですね(笑い)。一番泣いちゃいました」と照れくさそうに笑った。

次戦は昨夏準Vの山形中央と対戦する。井上は「実力差は明らか。まとまりを持って、今日ぐらいの勢いで臨みたい」。次は88年以来35年ぶりの「夏2勝」に挑む。【濱本神威】

 

○…熱い高校野球が山形に戻ってきた。今大会は声だし応援が可能になるなど、4年ぶりにコロナ禍前と同じ形で開催。開会式では昨夏Vの鶴岡東を先頭に、46校42チームが堂々と入場行進。南陽・田中春伍主将(3年)が「あきらめないプレーで、支えてくださった方々に感謝の気持ちを伝えます。熱いプレーで、次の高校球児に夢を届けます。そして、野球ができる喜びで、山形県全体を熱く盛り上げることを誓います」と力強く選手宣誓した。

今年の3年生の入学は21年春。声がだせない練習や無観客試合など“声のない高校野球”だった。田中は「高校に入学してから思うように野球ができない日が多かったが、周りの方に支えてもらって3年間続けてこられた。いろんな人に感謝の気持ちを伝えよう」と言葉に込めた思いを明かした。一言一言かみしめるように宣誓。「ちょっとうるっときました」と田中は振り返った。