徳島商の最速149キロ右腕の森煌誠投手(3年)が強力智弁打線の前に屈した。鉄腕は徳島大会から全7試合、最後までマウンドを譲らず、859球を投げ切った。

3点のリードを守れなかった。初回に3点を先制したが、3回に早いカウントから積極的に攻められて4連打。同点に追いつかれると、5回には左中間への適時二塁打で勝ち越しを許す。6回には押し出し四球に適時三塁打で4点を失い突き放された。「味方が先制点を取ってくれたのに、自分が守り抜くことができず申し訳ない。自分では疲れは感じていなかったけど、ボールが垂れていたりして体は疲れていたのかなと感じました。メンタルで押されていた」と肩を落とした。

「責任者」からの1年間だった。新チーム結成後、森影浩章監督(60)が森煌をキャプテンに任命予定だったが、「心が弱かった」と監督就任後初めて「責任者」というポジションを課した。優しい性格から「コイツにすべてを背負わせよう。先頭をきって実力を前面に出して『ついてこい』と」との思いを込めた。

7点ビハインドの9回裏には打席が回った。森影監督から打席に立つか問われ、森煌は「代打をお願いします」と自ら退く決断を下した。今夏初めてベンチへ下がった瞬間だった。「諦めてはいなかったけど、せっかく甲子園に来たので、控えの選手に甲子園の土を踏んでほしかった」。主将として仲間を思いやった。仲間も奮闘し、1点を返した。「変わってからみんながつないで点を取ってくれてベンチも盛り上がっていたのでとても楽しかった」と主将として最後はベンチから見守った。

今夏の甲子園出場校では唯一、地方大会から全試合完投。「最後まで投げきれたのは人生の財産。とても思い出に残る夏でした」。今後は社会人でプレーする予定だ。「大舞台で投げきる力がないと実感した。ストレートの質を求めていくのと同時に打たれても負けないメンタルを鍛えていきたい」。徳島の鉄腕の夏が終わった。【林亮佑】

◆四国勢が姿消す 川之江、英明に続き、高知中央、徳島商が敗退。四国4校が3回戦に進めなかったのは19年以来。