神村学園・川下晃汰主将(3年)は思春期の訪れが早かった。

母の由紀さん(45)は「小5とかの頃?…」と記憶をたどる。元甲子園球児の父は厳しい。川下自身もプレーにもイライラした。いつしか「分かってるから」「黙れ」と反抗するようになった。

1月10日、早生まれ。中1夏にU-12の侍ジャパンに選ばれた。背番号1。台湾でのW杯で、南太平洋からやって来たフィジー代表に30対0で勝った。忘れられない。

「自分の考え方が大きく変わりました。相手のグローブがぼろぼろで。バッテ(打撃用手袋)もなくて。でもみんな一生懸命で。野球できるのも、野球道具を買ってもらえるのも、当たり前じゃないっていうのをすごく感じました」

反抗期は早々に店じまい。「ありがとう」が自然と口につき、リスペクトの精神も芽生えた。センバツ開幕前のキャプテントーク。川下は他31校のどの主将よりも群を抜いて楽しそうに、周囲の話に耳を傾けた。「大阪桐蔭の主将とか僕と同じ2ケタ背番号で。すごく勉強になりました」。その強豪に敗れ、思いは夏に持ち越し。「親にも結果で恩返ししたいです」と照れずに言った。【金子真仁】