<高校野球埼玉大会:小川2-1山村学園>◇9日◇1回戦

 小川・正木瞭平主将(3年)の一振りが試合を決めた。1-1で迎えた9回裏、無死一、二塁。サヨナラの場面で打席が回ってきたのは4番の正木だった。開幕試合を引き当てた「持ってる」主砲は勝負どころでも集中していた。直球を思いっきり振る。カウント1ボール1ストライクからの3球目、狙い通りに来た高めの直球をフルスイング。打球は右中間を割った。

 「人生で初のサヨナラ打です」とはにかむ正木は、春からスランプに苦しんだ。長打が出ず、悩んだ。開幕前は3週間毎日、1000回バットを振った。主将の重圧と不調が重なり、イライラする息子の姿を母久子さん(45)は見ていた。おとなしく、先頭に立っていくタイプではないと主将になったときは驚いた。「勝てますように」と験を担ぎ前日の夕食はカツカレーにした。

 不調に苦しんだ息子が目の前でヒーローになり、「うれしい」と涙目の母は、「また2回戦の前日もカツカレーにします」と勝利のおかわりを早くも予告した。