<神宮大会:鵡川6-3国士舘>◇3日目◇17日◇高校の部準々決勝◇神宮

 鵡川(北海道)が、自慢の強打で国士舘(東京)を6-3で下し4強入りした。初戦に18安打を放った打線は、この日も13安打をマーク。6番阿部康平右翼手(2年)の活躍などで5回までに6点を奪い、エース西藤昭太(同)も8回を1失点に抑えた。道勢の大会2勝は、05年に優勝した駒大苫小牧に続く2校目になる。18日、準決勝の慶応(関東・神奈川)を倒して、決勝を目指す。

 「シシャモ打線」がまた火を噴いた。初回、先頭の阿部智が左越え二塁打で出塁すると、送りバントを使わない鵡川流の強攻が続いた。2番宮本は右飛に倒れたが、西藤が四球、4番柳田が三遊間を割ってまず1点。本塁返球の間に2走者がそつなく進塁し、5番森の右犠飛で2点目。続く阿部康も一、二塁間を破り早々と3点先取だ。

 2回に敵失から2点を加え、5回には森、阿部康の連続二塁打で6点目。初戦の先発全員18安打に続く13安打。本塁打こそ出なかったが、「毎日バットは1000回振らせている」(佐藤茂富監督=68)という豪打にかげりはない。

 打撃に加え鵡川の強さを支えるのが6番阿部康の足だ。初回に適時打で出塁すると二盗、三盗を立て続けに決めた。遊撃内野安打で出塁した3回にも二盗に成功、直後にけん制悪送球を誘い三塁へ。中学3年時に100メートル12秒8、今は「多分12秒前半」というチーム一の足が、ワンヒットを“三塁打”に変える。

 阿部康は「自分は足で突破口を開こうと思っています。捕手がはじいたりのミスは絶対に見逃さない」と不敵に笑った。先月の練習試合で、阿部康の足に泣かされた旭川南の小池啓之監督(57)も「あの選手が素晴らしい。走塁も含め今の鵡川は史上最強だと思う」と話す。鵡川で過去2度センバツに出た元部長の言葉だけに重みがある。

 エース西藤は四死球6と制球に苦しみながらも8回を1失点とゲームをつくった。秋季全道終盤で握力がなくなった状態に今回も陥り、速球は初戦の最速144キロに及ばない140キロだった。それでも「あの経験を生かし、今日は悪いなりに抑えられた」とツーシームを多投し、微妙に芯を外す投球でしのいだ。

 明治神宮大会で準決勝進出した道勢は過去7チームあったが、1大会2勝での4強入りは駒大苫小牧しかなかった。次は駒苫以来の準決勝の壁突破、そして2校目の優勝へ。シシャモ打線はまだまだ「旬」だ。【本郷昌幸】