<高校野球西東京大会:日大三15-6日野>◇24日◇4回戦

 弔い、雪辱の思いは届かなかった。日野の特別な夏が終わった。優勝候補の日大三を7点差で追う4回。佐々木千隼(ちはや)内野手(2年)の2ランで逆襲の口火を切った。5回にはエース吉永を引っ張り出し、攻め立てた。7回には1点差まで迫った。だが、8回に3人の投手が打ち込まれて万事休した。

 前部長の加藤陽一さんが3月29日、がんのため49歳で死去した。09年に4強入りした日野が「都立の雄」と呼ばれるようになった立役者だった。その快進撃を見て入学したのが、2年生だった。100人近い部員1人1人に目を配り、基本から丁寧に指導していた加藤さんだが、右足にできたがんが肺や肝臓に転移。昨夏の西東京大会前に休職に入った。

 スタンドとベンチには、「治ったらまた野球をやりたい」と話していた加藤さんの遺影が飾られた。応援団はそろいのTシャツをつくった。背中には「約束」の文字。坂井文貴外野手(3年)によると「加藤先生を甲子園に連れて行くことを約束する」という意味が込められていた。09年に敗れた日大三との対戦。西東京の都立校では最後のとりでとして、雪辱には最高の舞台だったが、届かなかった。嶋田雅之監督(48)が、悔しそうに肩を落とした。「加藤さん、大物、釣り損ねちゃいましたよ」。【森本隆】