<高校野球宮崎大会:日南学園6-3鵬翔>◇25日◇準決勝

 日南学園が鵬翔との延長12回の接戦を制して3年ぶりに決勝進出を決めた。3-3で迎えた12回、背番号20の代打長谷川直哉捕手(3年)が左翼フェンス直撃の二塁打を放ち、勝ち越しを決めた。

 白い照明の光に照らされて打球は左翼ポールから数10センチ内側のフェンスに直撃した。12回表、日南学園が1死満塁から2走者が生還し勝ち越し。勝負を決めたのは背番号20の「代打の切り札」長谷川だった。

 「練習から調子が上がっていたので重圧を楽しむ気持ちで打席に立ちました」

 長谷川はこの夏2打席目で初安打がチームを決勝へと導く殊勲打となった。

 追いつき追い越すシーソーゲームとなった。鵬翔とは今季4度練習試合をして負けなし。宮崎日大のプロ注目の右腕を破り上り調子の鵬翔に押される場面もあったが、8回からのロングリリーフとなった村田陽春(3年)が粘り強く無失点に抑えた。

 12回、金川豪一郎監督(33)が「いい場面で打たせたかった」と勝負をかけた長谷川は、もともとは背番号2の正捕手だった。昨年9月、左膝の半月板を痛め11月に手術を受けた。最後の夏は2から20へ。

 「大会前は悔しい気持ちもあったけど、チームのために頑張りたかった」

 裏方に徹した男がこの夏最高の舞台でスポットライトを浴びた。

 チームは1年間、結果が出なかった。昨秋は準々決勝で部員12人の西都商に敗れ、春は宮崎農に初戦敗退。「技術ではなく心のトレーニングが必要」と金川監督は春休みに、選手を鹿児島県志布志市にある禅寺へ連れて行き座禅を組ませた。住職の「今を大切にしなさい」という話が選手の心に響いた。「あれから粘り強くなってきましたね」と金川監督は春以降の成長に手応えを感じている。

 西武中崎、ソフトバンク有馬のダブルエースを擁して決勝進出して以来3年ぶりの舞台だ。「県内で1番苦しい思いをしてきたと思うので、明日は決めたいです」。この日ヒーローとなった長谷川が元気に宣言した。【前田泰子】