<高校野球岩手大会:久慈7-6岩泉>◇10日◇2回戦◇森山総合運動公園野球場

 久慈が延長12回の熱戦の末に藤森崇平外野手(3年)のサヨナラ打で岩泉を下し、3回戦に駒を進めた。

 息詰まる熱戦に終止符を打ったのは、伏兵の一振りだった。延長12回1死満塁。フルカウントから甘く入った6球目を、藤森は見逃さなかった。「みんながつないでくれたチャンス。絶対に決める」と強い意志が乗った打球は、二塁手の頭を越えて右前へ。一塁を回ってから本塁へ駆け寄ると、仲間と思いっきり喜びを分かち合った。

 新チームのコンセプトは「打ち勝つ」。君々洞(きみがほら)卓朗監督は今春、東海大甲府(山梨)など強豪校への出稽古を敢行し、攻撃力を磨いてきた。4番から6番には、いかなる状況でもバントはなし。そんな中、2番藤森はつなぎ役に徹する。「球を見極めようとして調子を落としていたが、打つべきやつが打たないとゲームは決まらない」(君々洞監督)。ムードメーカーでもある藤森の活躍は、次戦以降にも好材料だ。

 震災で野田村の自宅が流され、現在も仮設住宅から通う。帽子は、サヨナラのホームを踏んだ中上圭秀外野手(3年)から譲り受けたものを使っている。「このメンバーでできるのも夏が最後。1日でも長くしたい」。苦難を乗り越え、仲間のために全力で尽くす。勝ち上がっていくためには、こんな男が欠かせない。【今井恵太】