<高校野球岩手大会:盛岡大付10-0大船渡>◇18日◇準々決勝◇岩手県営

 大船渡は、どんなに打たれても、全力で立ち向かった。盛岡大付に圧倒され5回コールド負け。3年連続で8強の壁は破れなかった。それでも0-4の3回、小松貴左翼手(3年)が好捕で二、三塁のピンチを救う。0-7の5回2死二塁では、浅い中前打でも1点を奪いに本塁に突入した。森拓真主将(3年)は「実力の違いはあったけど、チーム一丸で戦えた」と涙をこらえた。

 大船渡を離れた仲間の思いも背負って戦った。震災で校舎やグラウンドに大きな被害はなかったが、街は壊滅。森と同学年の菅野俊内野手は山梨に避難し、野球をあきらめた。主将候補だった蒲生和憲内野手は自宅と母を失い、岩ケ崎(宮城)に転校。前日17日に岩ケ崎は敗退し「お前たちは勝ってくれ」とメールが届いた。森は「あいつらのためにも勝ちたかった。来年は甲子園に行ってほしい」。心に大きな傷を負ったチームを引っ張ってきた主将の思いは、後輩たちに託された。【鹿野雄太】