<高校野球岩手大会:不来方5-4大槌>◇18日◇準々決勝◇花巻

 大槌が不来方に惜敗。4番金野利也捕手(3年)は4打数無安打で、右腕エース岡谷惇喜(3年)を援護できず、涙した。

 「惇喜を助けたい」。大槌の4番金野は、その一心で打席に立っていた。1点を返して3-5とした8回。三塁には、適時打を放ったエース岡谷がいた。ここで1点を加えれば-。しかし、金野の打球は遊撃へ。一塁へのヘッドスライディングも間に合わなかった。

 昨夏までは投手で、岡谷とは背番号1を争っていた。だが、震災の影響で同級生が転校。捕手不在のチームを救うため、12人となった昨秋からコンバートした。「ピッチャーとしてライバルだったけど、惇喜のことは一番知ってるつもり。力になりたかった」と投手への未練は断った。あざを作りながら、ショートバウンドの球を受ける日々。「頼れるやつなんです」と話す岡谷の球を受け止めるため、必死だった。

 震災で母真弓さん(享年52)ら親族5人を亡くし、1カ月ほど体調を崩した。野球はやめると考えていた時、岡谷が会いに来た。部室にあったボールとグラブを持って。「キャッチボールしようぜって。地震の後、初めてボールを握った。惇喜のおかげです」。

 今大会4試合を含め、昨秋から公式戦全イニングを投げてきた岡谷。その球を、金野は全て受けてきた。「バッテリーを組んで、もっと試合をしたかった。でも、続けてきて本当に良かった」。そう言って、涙をぬぐった。【今井恵太】