<高校野球北北海道大会:旭川工2-1遠軽>◇20日◇決勝◇帯広の森

 砂煙とともに、遠軽の甲子園初出場の夢が、また消えた。1点差に迫った9回裏2死三塁、遊ゴロを放った最後の打者・庄司三塁手の一塁ヘッドスライディングも及ばず、1-2の惜敗。2年連続の決勝敗退に、佐藤貴之監督(41)は「願いはなかなか、かなわないものなんですね」。言葉に詰まりながら、精いっぱいの敗戦の弁だった。

 ここ8年で4度目の決勝進出で“4度目の正直”も実らなかった。エース松川が被安打12本も、粘りの投球で2失点。最後に意地を見せたが、あと1点が届かなかった。試合後、ナインは泣き崩れ、おえつが止まらない。河合主将は「(甲子園は)行けると思っていましたが、行けるようで行けない。遠いところだと感じました」と、しんみりと話した。

 意識改革して臨んだ大会だった。「意識させなくても、どうしても意識する。それなら思い切り意識させよう」(佐藤監督)。「甲子園」を禁句にした昨年から一転、徹底的に聖地を意識させた。決戦前夜もナインに校名の入っていない甲子園のトーナメント表を見せた。「5日目くらいがいいんじゃない」「開幕試合もいいね」など。選手の頭に甲子園の想像を詰め込んで臨ませたが…。「違う方法があったら教えてほしいですね」と佐藤監督は言葉をつないだ。

 昨春は21世紀枠候補止まりで、北大会決勝は4連敗となった。それでも、旭川工の優勝インタビューが始まると、佐藤監督から1、2年生に「向こうを見ておけよ!」「スコアボードも見ておけよ!」と、2年連続で同じ声が飛んだ。悔しさを胸に刻んだ2年生の3番前田一塁手は「3年生の分も背負って、自分たちの代で来年甲子園に行きたいです」と力を込めた。今日21日から新チームは動きだす。悲運のチームでは終わらせないために。【村上秀明】